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地下の地下性を徹底した果ての輝き! 2月7日(火)@渋谷WWW 姫乃たま3rdワンマンライブ「アイドルになりたい」

 姫乃たまさんのワンマンライブを観てきました。ごく簡単に感想を。

 姫乃たまさんのお書きになるものが好きで追いかけていましたが、ライブとかイベントにはほとんど行ったことがありませんでした。去年トークイベントに2回ほど行ったくらい。その時に短いライブコーナーがあり、そこで聴いた曲くらいしか知りませんでした(しかも、そのうち1回は宗像明将氏と「普通の恋」を歌ってたので、オリジナル曲ではない!笑) 

lucas-kq.hatenablog.com

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 開演20分くらい前に会場に入ったのですが、既に非常にたくさんのお客さんで埋め尽くされていて、それだけでなんだか胸が熱くなりました。で、開演前に流れている音楽がもうすでにメチャクチャ良い! やたらと煽情的で蠱惑的な愛を歌ったムーディな歌謡曲が多めに流されていたのが面白かったです。「地下」らしい、いかがわしさみたいなものをわざと強調するかのような再帰的な身振りがいかにも姫乃たまさんらしい!! この開演前のDJがとにかくめちゃくちゃ良かったので、このセトリも知りたいくらいでした!

 ライブは「僕とジョルジュ」の曲から始まりました。最初に、色んな映画のキスシーンが次々と流れる映像が映し出されて、演奏陣が順番に登場していく演出がとってもクールでした。姫乃さんはたいへん可愛らしいお洋服で登場しました。髪も巻き巻きでたいへん美しかったです。秘密結社のボスに飼われている猫のような気品。序盤でいきなり姫乃さんのおばあちゃんが出演されたのには大変驚きました。姫乃さん曰く、「人生で何度めかの一生のお願い」と「冥土の土産」がうまく妥結したとのことでした(笑)

 第1部が終わると、幕が再び閉じられ、幕間には姫乃さんが行った「どさ回りツアー」の映像が流されました。1周分の尺では支度が終わらなかったようでリピート再生に突入し、2週目の半分過ぎくらいで第2部が開幕しました。今度は白い衣装に着替えての登場で、これまた可愛らしい。ドラえもんに出てくるみーちゃんみたいな可愛らしさでした。生で聴く「来来ラブソング」、超良かったです。めちゃくちゃライブ栄えする曲ですね!!

↓来来ラブソングを歌う姫乃たまさん

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姫乃たま/来来ラブソング

 

 2回目の衣装替えを経て、ライブは終盤に突入しました。今度は赤い衣装に身を包んでいて、これまた相変わらず美しかったです。そしてここで、バンドメンバー・関係者・ファン一同からのサプライズが披露されました。「ねえ、王子」をいろんな人が踊った映像で、姫乃たまさんがいかに多くの人に愛されているかということが結実した素晴らしい映像作品でした。眼から体液がこぼれ落ちそうになりました。姫乃さんはこの日のMCの中でも「好きになったり嫌いになったりしてください。そういうお仕事なので」という主旨のシニカルなことを口にされていましたが、たくさんの人からの愛を浴びて、一晩だけでもいいから「呪い」みたいなものが解けていたらいなと思いました。私もネガティブなタチなので、抱えた闇とは一生お付き合いしなきゃいけないなと思うわけですが、ほんのひと時にせよ、それらをしばらく横に置いておけそうな気がする瞬間って人生の中で時々あると思うのです。

 陳腐な感想しか言えませんが、ご自分の身一つで地下アイドルとしての活動を始めて、そして2月7日の夜にこれだけたくさんの人に支えられてWWWでワンマンライブをやり遂げるなんて本当にすごいと思いました。「地下アイドル」を自称する姿勢を崩さず活動を続けてきた姫乃さんですが、昨夜姫乃さんが放っていた輝きは、地下アイドル性(というものがあるのかどうかは分かりませんが)を徹底した果ての素晴らしい輝きだと思いました。間違いなくみんなの「アイドル」になっていました!

↓ライブ終盤の様子

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前夜から当日にかけての姫乃さんのつぶやき

 

栗原裕一郎さんの感想にとても共感しました。

 

地下アイドルの現場が、そんなに「生臭い」場所であってほしいのか?(Eテレ「ねほりんぱほりん」地下アイドル・前編(2月1日放送分)の感想)

 「ねほりんぱほりん」観ました。もやもやせざるを得なかったです・・・。不愉快なものに対しては、とりあえずスルーしておけばいいだけの話なのかもしれないけれども、やっぱり一言書いておきたいと思いました。

 いろいろ言いたいことはありますが、まず、地下アイドルの多様性を捨象し過ぎであることが一番マズいんじゃないかということを指摘しておきたいです。70名以上に取材したということですが、その70名強はどのようにして選択されたのでしょう。個人でやっているか否かとか、集客規模とか、自前の音源の有無とか、全国流通盤の有無とか、本人のモチベーションの高低とか、ライブの頻度とか、地下アイドルを取り巻く環境を左右する関数は色々あるわけで、その辺のバランスは取れていたのだろうかと疑問を抱きました。70名強って地下アイドルの母数を考えたら少ないと思います(真面目に活動している地下アイドルたちからは、下品で失礼な取材が断られてしまったからそうなったのか、ハナからエグい話を聞けそうな人をチョイスして取材を行なったのかは分かりませんが・・・)。

 トークに参加している3名の子たちは、地下アイドルの世界の中でも、間違いなくいちばん深いところにいる子たちであるはずで、もう少し大きめの規模で面白いことをしているグループの存在が完全に無視されていることが理解できません。彼女たちだけをもってして、「地下アイドル」を代表させてしまうのはいかがなものでしょうか。例えば、アメリカの野球界の「マイナーリーグ」について語る際に、「ショートシーズンAクラス」のリーグだけを取り上げてすべてを語ったことになりますか? というかそもそも、トークの収録に参加していた3名の中に、(失礼な言い方になってしまいますが、)「自分の承認欲求をほどほどに満たす」以上のモチベーションでアイドルをやっていると思われる人が1人でもいましたか? もちろん、どのようなモチベーションで何を目的にアイドルをやっても、それは当人の自由だと思いますが、(だから彼女たちには何の罪もないのは当然として、)やはり制作サイドの人選の偏向性の醜さが見え隠れしていたと思います。適度にバズりそうな、過激な話が聞けそうな人をチョイスした感がむんむん。そりゃあ、「つながりの発覚」とかそういったことが、どこかで日々起きていますけども、そこはマジョリティではないですよ、と。

 また、事実関係の確認にも甘さがあると思いました。「手ブラチェキ」という言葉が一時的にかなりバズりましたが、結局彼女たちの証言の中にしかそれはない(※TL上で手ブラチェキを撮ったことがあるという人の写真が出回りましたが、それはAV女優出演のイベントで撮られたものであって、地下アイドル界隈のものではありませんでした)。もちろん、今のところは虚偽だとは断定できないでしょうし(かなり怪しいものですが・・・)、断定できない以上はそんなことは言うつもりもありません。そういったチェキの販売の仕方をしている人が実際にいるのかもしれません。しかし、今やかなり多様な「生態系」を持っている地下アイドルの世界の、最も深い地帯のそのまた辺境に存在する激レアケースであるというのが正味のところだと思います。その辺りがほとんど割り引かれないまま、高い影響力を持つメディアによって、その実在が確認されてすらいない「手ブラチェキ」が過剰にクローズアップされてしまったのは、上を向いて頑張っているすべての地下アイドルたちにとっても、彼女らを応援するオタクたちにとっても、不幸なことだと思いました。

 

 2月1日付で番組の公式ブログに掲載された「おまけ」のお粗末さについても。もっとみんな怒るべきだと思います。「★地下アイドルおまけ★ アイドルあるあるライブレポ」なるものが公開されていますが、地下アイドルがあまり関係ない「あるある」が多く入り混じった内容となっています。「”地下”アイドルあるある」とは題していないから、セーフなのかもしれないけれど、だったら「★地下アイドルおまけ★」なんていう文言はいらないと思う。広い意味では同様のカテゴリーに含まれるとはいえ、環境や事情が異なる界隈の「あるある」を載せる意味がそもそも全く分かりません。内容を見てみると、もちろん地下アイドルのライブでも起こりがちなことは含まれているけれども、1個目のあるあるに添えられたイラストにいきなり武道館が出てきていてズッコケました。なんで地下アイドル特集回のおまけなのに、「地下アイドルあるある」にしなかったんだろう。事実関係の正確性に繊細に気を遣うつもりが無い者が制作に関与していることの証左としか思えません。もしくは、取材の対象に対する愛やリスペクトが決定的に欠如している。いや、その両方か・・・。

ねほりんぱほりんブログ:NHK

 

 アイドルの世界は、スキャンダルの発生源としては、昔からかなり熱いスポットであったと思うし、好奇の眼差し・嫌悪の眼差し・怖いもの見たさの野次馬の眼差しが向けられやすい場所であるのは認めざるを得ないと思います。しかし、「ブーム」から「文化」へと移行しつつある現代のアイドルを取り巻く状況を、相も変わらずひたすらに「生臭い」場所としてのみ取り扱うのはちょっと心外です。

 唯一評価できるところがあるとしたら、冒頭の吉田豪さんのコメントをそのまま使ってくれたというところくらいでしょうか。アイドルの世界を網羅することの不可能性を、まぎれもない「有識者」の一人であるはずの豪さんが真摯に語ることの重み!

 もしかしたら、吉田豪さんのこの発言を冒頭に持ってくることでもって、「このあと登場する事例は普遍的なものではありません。なぜなら全体を見通すのは不可能ですから!」というエクスキューズにしようとしていたのかもしれないけれど、全然エクスキューズにはなっていないですよね・・・。後編ではストーカー問題とか恋愛事情にも切り込んでいくみたいですけど、社会全体に遍く存在しているはずの問題を「地下アイドル」という職業(?)の世界だけのものであるかのように取り扱うのだけはやめてほしいなあと願っています。普通の社会問題を、特定の職業・階層・趣味の共同体の問題のように錯覚させるようなことはしないと信じています。良いバランス感覚で一つお願いします!!

 

 

 「地下アイドルまとめブログ」さんも、一人歩きしてしまった「手ブラチェキ」について個別に記事を上げておられます。

地下アイドルまとめブログ 【悲報】ねほりんぱほりんで紹介された「アイドルの」手ブラチェキ、ドルヲタが誰も知らない(前にアップされた画像は、アイドルではないAV女優の方のものでした) 「アイドル現場で手ブラチェキとか聞いたこともないんだけど」

 

 地下アイドルのことをよく分かっていない、でもどんなものか興味がある!という方には、姫乃たまさんの書かれたこういう記事こそ読まれればいいなと思います。とても素敵な入門書。

www.news-postseven.com