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小川晃一と「君」と「僕」と「夜」 おやすみホログラムの詞世界考察part1

 小川晃一氏の書く詞の世界が好きなのです。おやすみホログラムが2人組になって以降、おやホロ楽曲の詞と曲は、プロデューサーの小川さんがほぼ全曲手がけています(「forever young」「エメラルド」が例外に当たる)。小川さんが作る曲の詞世界は、夜が舞台となっていることが非常に多いです。また、「君」という存在の影や、失くしてしまったものの残像を追いかけているような感じの曲も非常に多い。自分の欠損を埋めるための何かを必死に追い求める物語、あるいは、欠損を抱えたままその場に留まり煩悶し続ける物語が執拗に描かれています。それがメロディと相まって、聴く者の感情を揺さぶる作品に仕上がっているのが、小川さんの作る楽曲の魅力なのかなと思っています。

 私が生来の歌詞フェチだというのもあり、今回は、おやすみホログラムの歌詞分析をやってみたいと思います。1stアルバム『おやすみホログラム』から「forever young」を除いた9曲と、2ndアルバム『2』の7曲を合わせた計16曲を精読してみましたので、小川ワールドのテクスト論的分析としてお楽しみいただければ幸いです。本稿は、「小川さんの意図を正確に言い当てる」というようなことが目的ではありません。作者の意図を一旦カッコに括ったうえで、むしろ、作者さえ意識していなかった部分まで解釈することを目指したいと思います。小川さんの無意識にタッチする冒険と言ってもよいかもしれません。

 

 さて、まずは多くの歌詞に見られる「君」について考えていきたいと思います。たいていの場合「君」は不在です。「僕」が見ることができるのは君の残像であり、触れることもできません。「君」の不在・消失に関わる表現が含まれる曲が一目でわかるように、試みに表を作成してみました。

 

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 「drifter」と「too young」の2曲のみ、「僕」と「君」がまだ一緒に居られていることが分かります。ただし、「drifter」には「離れてくのが怖くてただ僕らここにいる」という表現がある一方で、「遠くなる君の影追いかけて走る」という表現もあり、「僕」はどうにかこうにか「君」と一緒に走れているにすぎないという事実を匂わせています。「too young」の方は「僕らは進む」「タイトロープの上で君が踊る 行き止まりだ」「ワールドエンドに来たよ ここが最後の場所だっていいよ」とあるように、二人で世界の果てにたどり着く形で詞が終わりを迎えています。「ここが最後の場所だっていい」と思えるほどに二人だけの時間を大切に過ごしている「僕」たちの情景が浮かぶ曲で、小川さんが作る曲にしては珍しい、ハッピーエンド感の漂う一曲となっています(その先に進むべき場所がないという不安も同時に暗示されているとも言えますが)。

 「僕」と「君」の距離感を読み取るには情報が足りない曲も2曲あります。「夜、走る人」は、現在CD化されているおやホロの曲の中で唯一の、三人称視点の詞を持つ曲です。「彼女は彼を知らない」というフレーズがありますが、二人の関係性はこれ以上は不明です(※ちなみに、同名の曲は小川さんのソロアルバムにも収録されていますが、小川さんver.の「夜、走る人」は歌い出しが「僕たちは眠れない」となっており、「彼」は「彼女」からは「ずっと遠いところにいる」と歌われています)。「tab song」は「これは君と僕の見る夢で」という歌い出しで始まり、「君」と「僕」が祈りも虚しく、分かり合えないままでいることが確認される曲となっています。最後は、「できる限り」「君の先」を「見ていよう」という前向きな意志で締めくくられますが、二人の距離感に関する情報は特に提示されません。

 そして、二つのアルバムの内の実に12曲は、「君」が既に不在でその影や残像を見ているか、「君」が消えつつあるような情景が描かれています。「plan」と「before」は、「drifter」に登場した「君」がとうとう完全に追い付けないところまで行ってしまった時点のことを描いているような気がします。「plan」がまさに「君」が消えてしまう瞬間を描いていて(「君がなんだか透けて見えるよ 夜に混じって溶けてしまいそう 消えないでまだ居てよ ふがいない手を伸ばした 触れそうな指先を かすめてく夜」)、「before」は消失から少しだけ時間が経った時点(「過ぎていったもう戻らない時間」「君が遠くなってく 僕はまだここにいる」)を描いているのではないかと。「strawberry」は「before」と同じ時間軸だと思っています。「きみが消えていく ぼくはここにいる」というそっくりなフレーズが登場するからです。

  「君」との別れ・不在を最も巧みに詞にしているのは「note」ではないでしょうか。「君が消える」とか「君が遠くなる」とか「君はいない」というようなあからさまな物言いが使われていません。「君がふとかさねた色とか、遠くを見る仕草や  捨ててしまったノートが、思い出になってたまるか」という歌い出しで、「君」の不在、あるいは「君」との別れを伝えます。「思い出になってたまるか」の一言で、「君」が既に過去のものとなっている(もしくは、そうなりつつある)ことも、でも「僕」はそれを認めたくないであろうということも全て表されているのです。J-POP史に残すべき巧みなフレーズじゃありませんか!  多くのおやホロオタにこの曲が支持されているのも納得です。「絶望」と「甘い味」という、イメージ的に遠い言葉を挑発的に絡めているところも巧い(小川さんはこの技をちょいちょい使ってます)。


【MV】note/おやすみホログラム

 

 「machine song」は「君」の消失からだいぶ経った後という感じがします。「僕」は「君」のことを何らかのメディア上で眺めている(「君がそっと、浮かび上がった 共有される気分はどう? ああ何も感じないか」「あー、消えちゃったね 画面覗き込んでつぶやいた」)。この曲はちょっとSF風味な部分があって、「plan」「before」「drifter」とは趣を異にしています。終盤は「君の手が描きだした 空想が暴れだして この世界を壊しだした なんていい日なんだろう」「君はもういないから それは到底とめられないし 僕はただこの世界を 見守ってるだけなんだ」と畳み掛けられていて、SFディストピアのような終末的世界感が描かれています

 私は小川さんの描くSF的な世界感が一番好きで、その中心に来るのは、ストレートにSFの名作を本歌取りしている「ニューロマンサーだと思っています。次のエントリーでは、「エメラルド」との関係性も視野に入れながら、ニューロマンサーの歌詞の面白さについて考えてみたいと思います。最後に、夜をモチーフとした曲の多さが分かる図も載せておきます。小川さんは「夜」を液体的なイメージで詞にする(「溶ける」のほか、表には載せていませんが、夜の中を「漕いで行く」「ナイトボート」などの表現も見られます)ことが多いんだなということがよく分かります。

 

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☆歌詞考察part2を書きました☆

lucas-kq.hatenablog.com

 

 

 

 

2 (ツー)

2 (ツー)

 
おやすみホログラム

おやすみホログラム

 

 

そのほかのエントリーも併せてどうぞ! 

 

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