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もしもし、そこの読者さま

ライブアイドルのライブレポ、Sexyzoneのライブ・映画・アイドル関連本などの各種考察

再び、『モッシュピット』について。それから、おやすみホログラムの「物語」。

 映画『モッシュピット』の上映会が各所で行われ、いずれも一定の反響を得ているようです。私も、都内で行われた上映会には二度ほど行きました。6月29日の新宿loftと、7月11日のloft9。ユーロスペースで観たバージョンも合わせると、全部で3バージョンの『モッシュピット』を観ました。以前も、この映画については考察めいたものを書きました。

lucas-kq.hatenablog.com

 上映会を経て、いろいろと考えることがあったので、再び『モッシュピット』について書きます。

 上映会に臨むに当たり、ちゃんと当事者たちの発言も確認したうえで観直そうと思って、パンフレットを手に入れて読みました。で、すごくビックリしたのが、岩淵監督はみんなのバラバラっぷりを撮ろうと思って撮っていたということでした。パンフレットの最初の方に、はせおやさいさんによる監督のインタビューがあって、そのことが見事に聞き出されておりました。

 ただ、一点だけ映画の解釈の仕方で異なる点がありました。岩淵監督は、バラバラな人たちがモッシュピットでは一つになるということを撮りたかったとおっしゃっていますが、私にはやはり、彼らはバラバラなままにしか見えませんでした。そして、肉体という壁をぶつけ合うことで「一体感」の仮構性を確認することが、モッシュピットという祝祭空間の果たしている機能なのだと思っています。

 以前のエントリーを上げた後に、少しだけ反響がありました。私が初めて『モッシュピット』を観に行った時に、トークショーに登壇された平野勝之監督の一連のつぶやきです。

 

 

 この指摘は非常にクリティカルで、『モッシュピット』の特徴の一面を的確にとらえていると思います。やはり、ご自身が表現者として一線で活躍されている平野監督にとっては、『モッシュピット』の見せ方は「凡庸」で「退屈」なものだったということなのでしょう。また、様々な監督が指摘していた「開かれていない」という点(平野監督の言葉でいえば、「外に向かうエネルギー」の「放棄」)も多いに当たっていると思います。ハバナイ、NDG、おやホロのことをある程度知っていなければしんどい部分があるのは確かで、その意味で、観客層を狭めてしまうような悪い意味でのハイコンテクストな傾向がこの作品にはあると思います。それでいて、個別具体的な彼らの活動を通してアングラなバンドに見られる普遍的な何かや、ライブアイドルに普遍的な何かが抽出され、フィルムに収められているわけでもありません。

 また、被写体との距離感という点で言えば、浅見北斗という強烈な個性を撮ることへの「禁欲」を徹底できていないふしも見られます。浅見北斗だけに注目せずに、シーンを取り巻く人間たちのバラバラさが見事に描かれているのは分かるし、だからこそモッシュッピトの儚さが際立っていて、初見の時には私もその点に感動しました。しかし、映画の冒頭の、浅見北斗が声を詰まらせながら熱い思いを語る場面は、誰がどう見ても浅見北斗の物語がこれから始まる!!というフリにしか見えません。しかし、岩淵監督はバラバラな人間たちのドラマを追いかけます。平野監督がトークショーで、「なんであの人を追いかけなかったの?」という趣旨の発言をされたのも、冒頭部分に対しての、その後の展開のちぐはぐさに違和感を抱いたからかもしれません。たしかに全体の構成を冷静に見直してみると、ある動物の体に、別の動物の頭をくっ付けたかのような印象があります。

 しかし、それでもやはり、ハバナイのライブ映像の美しさや、NDGのパフォーマンスの何とも言えない迫力、何よりモッシュピットという場でぶつかり合う人々の逆説的な非一体性を表現したという点においては、岩淵監督の仕事はもっともっといろんな人に知ってもらうべきだと私は思いました

 

 話は変わりますが、7月11日の上映会では、上映終了後におやすみホログラムのトークがありました。その中で印象的だったのが、おやすみホログラムの活動は物語化しにくい/物語性を積極的にこちらから提示していないという趣旨の発言です。これは、話を振られた八月ちゃんが言いかけて、その続きを小川さんが預かる形でお話していました。たしかにおやすみホログラムは、例えばハバナイの「blood on the mosh pit」のPVのように、モキュメンタリー的な見せ方で大舞台への道程を意味づけていくような表現は行なっていません。

 


Have a Nice Day!(ハバナイ) 『 blood on the mosh pit』

 

また、おやすみホログラムは、メンバーが自身の内面を積極的に語ることが(ゼロではありませんが)非常に少ないです。歌詞の中で描かれる世界も匿名的で、現実世界との結びつきを拒否するような、幻想的もしくはSF的な世界観を持つものがほとんどです。

lucas-kq.hatenablog.com

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 しかし、小川さんの発言には引っ掛かる部分もあって、物語形式のコンテンツを積極的に見せないようにしていたとしても、「歴史」という形での物語化は、いかなるアーティストであっても不可避的に起こるのではないかと私は思ったのです。おそらく小川さんもその点については分かっているはずで、2ndワンマンの会場で初公開された「おはようクロニクル」は、おやすみホログラムの物語そのものでした。

 

youtu.be

 

 この曲は、これまでのおやすみホログラムの活動を時系列に沿って歌い上げてくものです。物語化をするつもりはなく重ねてきたそれぞれの活動であっても、こうして、始まりと中間と終わりを持った一つの曲としてまとめられたことで、まぎれもなく物語が成立しています。2ndワンマンの会場で初めてこの曲を聴いたあの瞬間、おやすみホログラムの「物語」の中に「われわれ」が参入しているという興奮を感じたのをはっきりと覚えています。

 小川さんはこの日のトークショーの中で、自分の感情などを表現するのもすごく嫌だということをおっしゃっていましたが、プロデューサーとしてのおやすみホログラムの戦略について、もっと聴いてみたくなった夜でした。

 ところでloft9は、とても綺麗で居心地の良いハコでした!

 8月1日(月)の安田理央さん、宗像明将さん、大坪ケムタさん、姫乃たまさんらが登壇するイベントも非常に楽しみです。ゲストにはおやホロバスのパロディAVを撮られたタイガー小堺さんもいらっしゃるとのことで、ますます楽しみです。

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