もしもし、そこの読者さま

ライブアイドルのライブレポ、Sexyzoneのライブレポ、映画・舞台・本などの感想などなど

おやすみホログラムが、とっても面白いんです。

常に研究 常に練習

知恵を結集し 君をレスキュー

RHYMESTER「K.U.F.U」

 

 もっと気の利いたタイトルを付けようかとも思ったけれど、ストレートな言葉しか思い浮かびませんでした。いよいよ3回目のワンマンを目前に控えたおやすみホログラムの音楽や、彼らを取り巻くクリエイティブの面白さをもっと多くの人に知ってもらえたら嬉しいと思い、書きます。まずは思い出話から始めることをお許しください。

 

 私がおやすみホログラムのライブを初めてちゃんと観たのは去年の夏、2015年8月9日のことでした。会場は渋谷o-nestこの日は昼間にSexy Zone中島健人くんのソロコンを東京ドームシティホールで観て、それから渋谷に向かうという、かなり風変わりな回し方をしました(笑)

lucas-kq.hatenablog.com

 

 その頃の私はタルトタタンが本現場だったのですが、この日出演する大石理乃さんの出番に、当時のタルトタタンのメンバーであったゆりえちゃんも少しだけゲストで出演するという情報を聞きつけて、観に行ったのでした。

 おやすみホログラムの噂は何度か聞いていて、「おやすみホログラムのライブは観た方がいい」「おやすみホログラムのオタクはすごい」と友人から聞かされていました。そしてこの日、対バンで出演したおやすみホログラムを観てみたのですが、私の中にあったアイドル像をぶっ壊すステージに度肝を抜かれました。金髪三つ編みと赤髪の二人組というビジュアルも新鮮でした。そして何より、音楽がとてもカッコいい! 歌詞もすごく良いし、曲も素敵で、やっぱりそこがおやすみホログラムに惹かれた一番の要因だと思っています。

 それから、「オタクがすごい」と友人が言っていた意味も分かりました。とにかくみんな、力いっぱい音に乗っていて、エネルギーがすごい。生まれてこのかた約30年間、そうしたライブに足を運ぶことなく生きてきた私にとってはとても新鮮でした。長らく聴いていたタルトタタンの音楽性が落ち着いた感じだったというのもあり、なおさら衝撃が強かったです。そして皆、現場を楽しむためにめちゃめちゃ創意工夫を凝らしているのです。このことについてはまた後述します。

 そこから先は、おやホロのライブに足を運ぶ機会が少しずつ増えていきました。そして今年の4月に、タルトタタンがワンマンを目前にしてメンバーが二人とも脱退するという事件が起き、これ以上にない悲しい他界を経験した私は、自ずとおやホロ現場にのめり込んでいきました。基本的にひっそりと楽しんで、ひっそりと帰ることが多かったのですが、アチェンジが起きたのが今年8月下旬のロフトプラスワンでのトークの日です。八月ちゃんが美術活動絡みの舌戦に巻き込まれ、ぽろぽろと涙を流すことになるという事件がありました。その時に、まるで我がことのように胸が痛んでいる自分を初めて自覚し、もっと本気で応援していこうという決意を固めたのでした。

 では具体的には、おやすみホログラムのどこが面白いのか。私なりに感じている面白いポイントをプレゼンしたいと思います。

 

①演者とオタク双方のクリエイティブが熱い

  おやすみホログラムの現場には、様々なクリエイティブがぶつかり合っています。冒頭でRHYMESTER「K.U.F.U」の一節を引用しましたが、このフレーズはまさに、おやすみホログラムの周りで起こっていることにピッタリだなと思ったので引用してみました(ちなみに私がこの曲を知ったのは、尊敬する先輩である批評家の矢野利裕さんの、Zeebraについての論考がきっかけでした)。プロデューサーのオガワさんをはじめ、メンバー2人も「常に研究」「常に練習」を重ねて、ライブパフォーマンスを進化させています。一方オタクたちは、様々なタイミングで「知恵を結集し」て、「君」(おやホロの二人)を「レスキュー」しようとしています。特別なライブの時などに、メンバーだけでなく他の観客もアッと言わせるような出し物を披露するオタクの皆さんがいます。あるいは、常日頃からライブの記録を残している撮影班的なオタクの方もいらっしゃいますし、私のように文字で記録を残すオタクもいます。おやすみホログラムの魅力を伝え、彼らをエンパワメントする「工夫」が盛んに生まれているのが、おやすみホログラムの現場なのです。宇多丸さんのマブ論におやホロちゃんを早く!

 演者が行うパフォーマンスだけでなく、それに呼応して繰り出されるオタクたちのクリエイティブをもコンテンツの延長線上に取り込もうとする点が、おやすみホログラムの面白さであると私は思っています。そうしたエネルギーを利用して、一つの催しものに仕立て上げてしまったのが、今年から始まったブートバザーです。最初に情報が出たときは、運営自らブートレグを公式販売する場を設けてしまうという発想に心底驚いたものです。オタクたちの自作グッズと、おやホロの作成した作品が、同じ空間で対等に売買されているってすごくないですか!? ブートレグを積極的に推奨して面白い場を作り出そうとするこの試みが、もっと大きくなればいいなと思います。複数のグループで共催したら相当盛り上がると思うのですが、今後の展開も楽しみです。

 

おやすみホログラムの生み出す作品そのものの良さ           

 おやすみホログラムに惹かれた大きな要因は、音楽の良さであるということを最初の方に書きました。私は特に歌詞が好きで、頻出ワードとかを小まめにチェックしてしまうくらいハマっています。オガワさんの書く詞は、何かしらの欠損とか、挫折とかが全ての曲に共通してあって、そこに引き込まれてしまいます。固有名詞を使わないところもポイントだと思います。何年経っても、どこに住んでいる人が聴いても人の心を打つ作品になっています。

 ミュージックビデオも素敵です。二人の可愛さが凝縮されています。力のある監督たちによる映像実験場みたいな部分もあって、腕によりをかけた素晴らしい映像作品が揃っています。「note」のMVはシンプルゆえに、二人の美少女っぷりが際立つ作品となっています。「帰り路」が心に残す余韻も素晴らしい。「11」ではハツラツとした二人の姿が印象的ですが、海沿いの場面では、日本人なら誰しも忘れないあの日の影を感じさせます。「ニューロマンサー」のテクノスケープも美しいです。どれをとっても見所満載です!

 


【MV】note/おやすみホログラム


【MV】おやすみホログラム「帰り路」/OYASUMI HOLOGRAM [way home]


【MV】おやすみホログラム「11」/ OYASUMI HOLOGRAM[11]


【MV】おやすみホログラム「ニューロマンサー」/OYASUMI HOLOGRAM [Neuromancer]

 

 また、おやすみホログラムはメンバー個々の活動も魅力的です。八月ちゃんは、美大出身なのですが、美術活動もやっていきたいということを、かねてから述べていました。10月の初めくらいに、ついにその活動を本格化し、パフォーマンスやドローイングの展示・販売を行ないました。また、11月16日のワンマンでは、装飾を監督します。さらに、新年にも美術系の活動が予定されているそうです。カナミルの方は、音楽活動を準備中だそうです。また、We speak your wordsという、オガワさんとカナミルそっくりの二人組の姿も数度確認されており、そちらからも目が離せません(不思議なことに、おやホロの物販で彼らの音源が販売されています)。

 

③アイドルとしての自己言及性

  「アイドルであること」をどれくらい徹底するのか、あるいはどれくらい身をずらすのかということへの強い自覚のようなものがおやすみホログラムには感じられます。以前は、いわゆるアイドルらしい振る舞いをトレースするかのようなパフォーマンスをしていたおやすみホログラムは、次第にバンドを率いて激しいライブを行う方向へとシフトし、荒々しいライブを行うアイドルの代名詞のような存在になりました。そして現在は、また別の方向性へと振り切り、可愛い歌声でノリノリなダンスミュージックを歌うグループに変貌しました。「今の時代はアイドルと名乗ってしまえばアイドルなんです」という趣旨の発言を、これまでいろんな現場で繰り返してきた彼ら。新しいアイドル像を提示し、様々な表情を見せてくれるおやすみホログラムはいつもファンをワクワクさせてくれます。これからも目が離せません。

 

アイドル成分多めの頃


おやすみホログラム / 【第一回 甘噛みモーニングコール】(2014年10月12日)

 

バンド編成のライブを重ねていた頃


おやすみホログラムバンドセット /Drifter20150406新宿ロフト

 

そして現在


2016.11.01 『friday』/おやすみホログラム at 六本木Super Deluxe

 

④二人組であるということ

 二人組であるということもおやすみホログラムの強みだと思います。二人しかいないことで、高いスキルを持った特定の誰か任せのパフォーマンスが許されない緊張感が生まれているのではないかと。二人きりで2年間活動してきた重みは、ボーカルの完成度の深まりに表れています。また、端々で見せつけてくる二人の絆にも、いつも胸が熱くなります。

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 私はジャニーズのシンメの文化がかなり好きなので、特に、二人組であることに燃えて/萌えてしまうというバイアスもあるのですが、八月ちゃんとカナミルはシンメとして本当に素晴らしいと思います。いつもしっかりと振り付けをこなす八月ちゃんと、振り付けにとらわれずに軽やかにステージ上を跳ね回るカナミルのバランスは、Sexy Zone中島健人菊池風磨のバランスに似ていると勝手に思っています。いつだかの少クラで披露した「Erectric Shock」における、きっちり踊るケンティと自由に歌う風磨くんのような。ケンティもリキッドに踊りに来ればいいと思うよ。

 

 さて、長々と勝手なことを書き散らしてきましたが、要するに、おやすみホログラムはめちゃめちゃ面白いユニットであるということです。先行する様々なミュージシャンやアイドルや芸術家の引用と、諧謔に満ちた彼らのクリエイティブは、単なる引用を超えたものすごいオリジナルになりつつあります。再び「K.U.F.U」を引用するならば、次の一節がぴったりと言えるでしょう。

 いつか、カナミルが制作した音楽をもっと聴ける日が来てほしいし、八月ちゃんはミントグリーンの偉大な先人と肩を並べるような(あるいは凌駕する)芸術家になれますように。

 

KとUとFとU わりとフツーに言うと「工夫」と言う

その美徳はまさに人間固有 偉大な歴史的モニュメント級

つまりご先祖たちの探求に 一個付け足す独自のブランニュー

RHYMESTER「K.U.F.U」