今年読んだ本(文庫版での再読含む)のメモ
一年の振り返り的な記事を書いてみようかなと思ったのですが、アイドルのことに限らずいろいろ書いちゃおうということで、まずは今年の読書の記録を。思い出せる限り書き出しました。これはもう完全に、自分自身の蔵書管理のためのメモのようなものなので、「ふーん」とか「へえ」とか言いながら読み流してくださればと思います。
森見登美彦『聖なる怠け者の冒険』『夜行』『ぐるぐる問答』
今年の秋は森見さんの本が豊作でした。『聖なる怠け者の冒険』は、文庫版になるにあたって内容に手が加えられているとのことですが、全然気づかなかったです。冗長さを改善したとのこと。『夜行』は不思議な物語でした。『ぐるぐる問答』はいろんな表現者とか作家さんたちとの対談が載っていて、読み応えがありました。
森博嗣が放つ剣豪小説! 著者は、ミステリ作家のイメージが強い方ですが、剣豪小説を書かせてもやはり超一流でした。人里離れた山の中で育てられた剣士ゼンが、世界のことを知り、剣の道について思索を重ねて強くなっていく物語です。ゼンの、世間知らずゆえの純粋な視点が、私たちの中の「当たり前」の歪さみたいなものを鋭く指摘する場面が度々あって、何回もハッとさせられること間違いなしです。
また、物語の舞台がすべて架空の土地で、登場人物名はすべてカタカナだったりもします。だから、歴史的事実みたいなものを気にせず、ノイズ無しで読めるのもこの作品の魅力だと思います。架空の箱庭の中で繰り広げられる物語。剣豪小説なのだけど、人間について哲学をしている感じ。それでいて、ものすごく王道の貴種流離譚なので、素直に楽しめます。今年の3月から4月にかけて一気に読みました。
ヴォイド・シェイパ - The Void Shaper (中公文庫)
- 作者: 森博嗣
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2013/04/23
- メディア: 文庫
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おやすみホログラムの「ニューロマンサー」について論じる手がかりを掴むため、夏頃に読みました(まだ自分の中で考えが熟していなくて、メモ程度のエントリーを当ブログに書き散らすにとどまっていますが・・・)。
文体が独特なので人によっては読みにくさを感じることもあるかもしれません。しかし、非常に優れたエンターテイメントだと思いました。男性主人公と二人のヒロインが登場人物としているのですが、ほんのりと、おやすみホログラムみを感じました(笑) 電脳空間の描写がとにかくすごくて、今ほどコンピュータが発達していなかった時代によくぞここまで想像力をはばたかせたものだと感心しました。おやホロ曲の元ネタということで、ご興味のある方は読んでみたらいかがでしょうか。
【MV】おやすみホログラム「ニューロマンサー」/OYASUMI HOLOGRAM [Neuromancer]
ウイリアム・ギブスン『あいどる』
こちらも、『ニューロマンサー』と同時期に読みました。ギブスンの作品の中ではマイナーな方なのでしょうか。舞台は日本で、日本の「アイドル」がモチーフとして登場する作品です。おやすみホログラムの曲の元ネタになった作家が、まさか、ずばりアイドルが登場する作品を書いているなんて驚きですよね。コアなSFファンの皆様にとっては、「今さら」な部分があるかもしれませんが、恥ずかしながらあまりSFに明るくなかった身としては、大変驚くとともに、めちゃくちゃ興奮しました。しかも、さらに驚くべきことに、この小説に登場するアイドルは、実体を持たない「ホログラム」のアイドルという設定なのです。
この作品に登場するアイドルは「麗投影」という名前で、とてもストレートな寓話的な名が与えられています。人気絶頂の大物ミュージシャンが、日本のヴァーチャルアイドルとの結婚を突如宣言したことから巻き起こる事件を描いたSFです。
もう、お話の設定の時点ですでにおもしろそうだと思いませんか? ジャスティン・ビーバーが初音ミクに恋しちゃうみたいな感じを想像すればいいのでしょうか・・・。日本が舞台になっているのですが、外国人から見た面白ニッポンみたいな描写も結構あって、それもまた読んでいて楽しかったです。私の大好きな新宿ゴールデン街も登場します。
なるべく早いうちに、おやすみホログラムと絡めて、この作品について何か書けたらと思っています。
石原先生の本が、より読みやすくなって出ました。解釈の力で作品の見え方を変えるというのは、やっぱり素敵なことだと思いました。研究のモードは移り変わっていくけれども、石原先生の論の持つ批評性というか、その輝きみたいなものは永遠だなあ。
文月悠光『洗礼ダイアリー』
文月悠光さんのエッセイ集。文月さんの詩がもともと好きだったのですが、エッセイも面白かった。文章中に韻が踏まれている部分があったりして、さすが詩人。技巧をあまり見せずに、肩の力が抜けているように見える文体で書かれた回の方が印象に残った気がしました。「詩は経験である」(リルケ)を実践している文月さんの、次の詩が楽しみです。個別に感想記事を書けたらなと思っています。
夢眠さんの作品集。たいへん読みごたえがあり、いろんなことを考えさせられる一冊でした。次は、夢眠さんの「書き言葉」を読んでみたい。
面白くて、長めの感想文を書かずにはいられませんでした。夢眠さんに届いているといいな。
会田誠『美しすぎる少女の乳房はなぜ大理石でできていないのか』
美術家のエッセイで一番好きなのは、会田誠です。単行本を持っていましたが、文庫版で再読。こんな風に読ませる文章を書ける人に、私もなりたい。個人的には、一冊目のエッセイ集である『カリコリせんとや生まれけむ』の方が好きだったりします。
美しすぎる少女の乳房はなぜ大理石でできていないのか (幻冬舎文庫)
- 作者: 会田誠
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
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堀江敏幸『バン・マリーへの手紙』
文月さんのエッセイの中で少しだけ登場する、堀江敏幸さん。彼のエッセイ集(?)です。「火事と沈黙」という文章は読んだことがあったのですが、『洗礼ダイアリー』を読んでその文章のことが真っ先に思い浮かんだので、ちゃんと読んでみました。面白かった!! そして、文章へのタイトルのつけ方がすごい巧い。
おやすみホログラム写真集vol.2&vol.3
おやホロの写真集が今年は2冊も出ました。3冊目はオタクに優しいサイズになったので本当によかったです。宗像さんによるインタビューがたいへん面白かったです。やはり私は、推しである八月ちゃんのインタビューに惹かれました。2016年9月11日に行われたインタビューで、パフォーマンス8すらまだ終えていない時点での話。アートパフォーマンスがどのようなものなのかと聞かれた八月ちゃんが、「儀式に近いですね」と語っていたことにとても興奮しました! 八月ちゃんがめちゃめちゃスラスラと自分の思いを述べているように見えるのは、宗像さんによる、構成の妙技のおかげなのだと思いました(笑)
おやすみホログラム写真集vol.2 DVD+ZINE (Humble Bible 2)
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fake to fake―おやすみホログラム写真集+DVDvol.3 (Loft BOOKS)
- 作者: 外林健太,ロフトブックス
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TRASH UP!! vol.24
久しぶりに出た最新号。これを一人でやられているというのは本当にすごい。おやホロの特集があったので買いました。インタビューの内容も写真も全部よかったです!
アイドルに関する本たち
『おやホロスタディーズ』という同人誌を作るに当たり、先行研究(?)をたくさん読みました。良いものも悪いものもありましたが、良かったものをズラリと。 『アイドルバビロン』はマジで名著です。資料としての貴重さ! 姫乃たまさんの『潜行』もよかった。これは個別に感想記事を書きたいと思っています。
【追記】書きました!
ゼロからでも始められるアイドル運営 楽曲制作からライブ物販まで素人でもできる! (コア新書)
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アイドル国富論: 聖子・明菜の時代からAKB・ももクロ時代までを解く
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「アイドル」の読み方: 混乱する「語り」を問う (青弓社ライブラリー)
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渡辺淳之介という、とてつもない個性を説き明かした一冊。クリエイター渡辺淳之介の人となりに迫っていく本であると同時に、渡辺淳之介自身に潜む「アイドル」性が宗像さんの手によって「クリエイト」された一冊なのだとも思います。
渡辺淳之介:アイドルをクリエイトする (MOBSPROOF EX)
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マンガいろいろ
漫画もたくさん読みました。『おいしいロシア』を読んで、春に旅行したロシアに想いを馳せました。イクラ食べたい~。ブリヌイ食べたい~。この本に載っているレシピでロシア料理を作ろうと思います。『いぬやしき』は話の展開が微妙になってきた気がします。『ヒューマニタス』は大変面白い連作短編集でした。これで新人だというからすごい! 『ヴォルフスムント』が素晴らしい完結を迎えて、次回作が楽しみになりました。『ワンピース』はどこまで人種問題を掘り下げていくのかが気になる。『ワンパンマン』は早く読者にカタルシスを与えてほしいです。
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『ゲンロン』
やっぱり、あずまんの仕事からは目が離せません。
矢野利裕『ジャニーズと日本』『SMAPは終わらない』
早くから芸能史におけるジャニーズに注目して批評活動を続けてきた矢野さんの単著が、今年は2冊も出ました。ミクロな視点とマクロな視点とのバランスが素晴らしい。SMAPの解散に合わせて「緊急出版」された本たちは、矢野さんのお仕事の前に粉砕されるがよろしいと思います。
SMAPは終わらない~国民的グループが乗り越える「社会のしがらみ」
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