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舞台でのみ輝き、傷付き、よみがえる 『DANCER セルゲイ・ポルーニン』

  映画『DANCER』を観ました。ウクライナ出身のバレエダンサーであるセルゲイ・ポルーニンのドキュメンタリーです。劇場公開が終わっていたので、海外版のDVDを購入して観ました。

 非常に素晴らしい映画でした。「バレエの神様に選ばれてしまった天才の、苦悩と再生の物語」と言ってしまえばありきたりに聞こえるかもしれないけれど、そういう映画です。ドキュメンタリーとしてのまとめ方はわりとベタなんですけど、そのベタさによって映画が損なわれていないのがすごいです。映画の良さのかなりの部分は、被写体であるセルゲイ・ポルーニンが放つ圧倒的なスター性の賜物だと思います。

 しかし、本作の魅力はもちろんそれだけではありません。セルゲイの家族や友人へのインタビューが非常に丁寧になされているのも、この映画の見所でした。セルゲイがたくさんの人の愛と期待を浴びて育ってきたことがよく分かりました。セルゲイの家庭は決して裕福ではなかったため、家族がバラバラになりながら必死に出稼ぎをすることで、セルゲイにバレエを学ばせていたことが劇中で語られています。家族がもう一度みんな一緒に暮らせることを夢見て人一倍稽古に打ち込んだというエピソードも胸が熱かった。

 しかし、セルゲイの両親は離婚してしまい、彼は心に深い傷を負いながらもバレエを続けます。英国ロイヤルバレエ団の最年少プリンシパルに上り詰めながらも、私生活が荒んでしまったというのは胸が痛みました。まるでどこかのアイドル!笑 冗談はさておき、生育期に受けた傷って、本当に一生本人を呪い続けるのだなあとしみじみ。バレエ団を電撃退団した後にロシアに渡り、徐々に再生していく過程はまさに王道少年漫画を見ているかのような心持ちでした。再び舞台に立とうとする前に、自分で髪をチョキチョキ切る場面があったのですが、これがすごく良かった。映画『ピンポン』で、一度は挫折して荒んだ暮らしを続けていたペコが、もう一度卓球をやり直すときの場面とダブって見えました(笑)

  劇中、セルゲイが踊るシーンももちろんたくさん盛り込まれているわけですが、跳んだ時の高さや、止まるべきところでピタッと制止するさまの美しさが半端なかったです。夏目漱石夢十夜』の「第六夜」で、運慶の鑿と槌さばきが「大自在の妙境に達している」と褒められる場面がありますが、セルゲイの身体もまさにそのようなものなんだろうなと思いました。

 これはもはやバレエとは全然関係ない話だけど、セルゲイのビジュアルからは時々、Sexy Zone中島健人みを感じたりもしました(笑) 前歯の感じとか。

 日本版のDVDなどがいつ出るのかは定かではありませんが、舞台で行われる芸能を愛するすべての人に観てもらいたい素晴らしいドキュメンタリーでした。舞台で傷つきそこから降りた人間が、結局舞台の上でしか生きられない自分と向き合い、舞台の上で再生する。まるでアイドルです。いや、まさしく彼はアイドルです。アイドルが好きな人も絶対ハマります。

  

 

  超美しいダンス映像。舞台をいったん降りた彼は、これで息を吹き返しました。 


Sergei Polunin, "Take Me to Church" by Hozier, Directed by David LaChapelle

 

静止画で見ても彼の魅力は素晴らしい  

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