ドラマチックに原作を圧縮! 『劇場版 幼女戦記』(監督:上村泰/原作:カルロ・ゼン)感想
『劇場版 幼女戦記』を観てきました。今回の劇場版は基本的には原作の流れに従いつつも、キャラクター同士の邂逅のタイミング等が微妙に改変されていました。最大の強敵となるメアリー・スーの登場を早めて、劇場版の尺の中で最大限ドラマチックな見せ場を作ることができるように上手に構成されています。
連邦の首都強襲や、サラマンダー戦闘団の結成といった重要なチェックポイントは忠実に押さえられていて、今後テレビシリーズの続きが作られたとしても矛盾が生じないようになっています。また、エンターテイメントとしての快楽を確保しながら、始まってしまった戦争を終わらせることの難しさについて鋭く切り込む場面もあって、「映画を観たぞ!」という満足感の得られる作品だったと思います。娯楽性と批評性の絶妙なバランス。
映像的には、戦闘シーンの迫力が素晴らしかった。音響も良かった。迫力だけでなく、虚しさや悲しさみたいなものも感じさせてくれます。食事の場面もとても良くて、ご飯がちゃんと美味しそうに描かれていました。モスコー強襲シーンの街並みも丁寧に描かれていて良かった。あの国の首都をモデルとしている割には、道路がちょっと狭すぎるような気もしたけど、20世紀はああだったのかもしれません。あとは何といっても、主人公のターニャの悪魔的笑顔。悠木碧さんの演技も相まって大迫力でした。
あらゆる要素において、たいへん楽しめる一本でした。原作の続きも楽しみです。アニメの続きもあるのでしょうか・・・。アニメの続きが制作された暁には、泥まみれの東部戦線や、景気が悪化していく帝国首都の描写も楽しみにしたいと思います。