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八月ちゃん、初めての「聞き手」 12月4日(日) ヘンミモリさん個展「メタモルフォシスと飽和」@ART SPACE BAR BUENA(ヘンミモリ、八月ちゃん)

 先日行われたトークの文字起こしです。ヘンミモリさんの個展「メタモルフォシスと飽和」初日に行われました。八月ちゃんが聞き手となったのは、初めてのことではないでしょうか。慎重に言葉を選びながら、丁寧に話を進めていく姿が印象的でした。相当緊張しているのが伝わってきたので、フロアにいるお客さんたちにもその緊張が伝わって少し固くなり、それを見て八月ちゃんもますます緊張するというような、緊張の螺旋階段を駆け上がっていくような雰囲気が序盤にはありました。でもすぐに、いつもの脱力感溢れる八月ちゃんの持ち味が出されて、終始和やかなトークが繰り広げられました。八月ちゃんは、以前に行なったオガワさんとのトークで見えてきた自分の課題みたいなものをちゃんと考え続けているらしく、「作品の分かりやすさ」の部分などについて高い関心を持っているようでした。

 美術の道を歩んでいる者同士のトークはたいへん面白いものでした。ヘンミさんは、自身の創作姿勢や、制作をする上での構えのようなものをしっかり言語化できる方で、八月ちゃんとは対照的な作家さんだと思いました。いや、というよりもむしろ、八月ちゃんが、言葉によって自分自身をプレゼンすることを、あまりにも不得意としているだけかもしれません(笑) そのような、異なるタイプの持ち味を持った二人のアーティストの化学反応も見どころだったように思いました。後半で語られたヘンミさんのセルフプロデュース論がとても面白かったし、ヘンミさんが野望を語る部分も興味深く聞かせてもらいました。八月ちゃんにとっても、めちゃくちゃ勉強になったトークだったのではないかという感じで、これからの二人が楽しみになりました。

 それでは、トークの記録を残しておきます。およそ50分にわたるトークを起こしたので、少々長いです。緑字が八月ちゃん、黒字がヘンミさんです。フロアからの反応は()で括ってあります。1人目の質問者は私だったりします・・・笑

 

************* 

 

はい、それではヘンミさんの個展「メタモルフォシスと飽和」のトークショーに移らせていただきたいと思います。私、あの、おやすみホログラムというグループにも所属してたりします八月ちゃんです。よろしくお願いします。

(拍手)

はい。そしてヘンミモリさんです。

よろしくお願いしまーす。

今日はトークショーということで、ヘンミさんに聞きたいこととかを持ってきたんですよ。

ありがとうございます。

はい。このライブペイントを終えてどうですか?

三年くらい前からエレファントノイズカシマシというグループを知っていて、彼らがやっているパフォーマンスは、動きがあるんだけれどもノイズを作り出しているような感じで、サーカスっぽくて面白いなと思ってたんですね。で、それと自分のアクションペインティングが合わさったら面白いなと思っていて。今日はそれができて、気持ちが高まって楽しい気持ちになっています。

初めてのコラボレーションなんですか?

2回目ですね。一応2回目なんですけど、今回は自分の心持ちがちゃんとしてたので、自信をもってさやることができたなと思ってます。

おお~。なんかけっこうザクザク描いてましたよね。今日展示されているこういう絵画と、ライブペイントは、分けてたりしますか?

うーん、あんまり分けてなくて、結局いつも私が制作をするときに重要だと思ってるのは、層を重ねていくことなんです。絵の具の層をいっぱい重ねて、最後に 削ったりとかするんですよ。例えば、3回重ねたら削って、3回また重ねて削ってっていうのを繰り返してどんどん絵にしていくというのをやってて。それを1時間でやるとこうなっちゃうみたいな感じ(笑)

ハッ、なるほど! そっか。けっこう消したり、絵の具をぬぐったりとかしてましたよね。

そうですそうです。最初に白でバーって塗ったり、色を1回バーって入れたりするんだけど、また上から消したり、ぬぐってしまってその絵の具を無くしたりっていうのを繰り返して。

その行為がすごく印象的だなと思いました。

ありがとうございます。

え~・・・。あの、私あれなの。こういうね、トークちょっと苦手なんですけど、皆さん気持ちを張りつめないで、ゆるやかに聞いてくださいね(笑)

勝手に質問とかもどんどん喋ってもらった方が(笑)

しゃべってオッケー。オッケーな感じなので。ここら辺が空いてるのも気になるし~(笑) どうせならもうちょっと前に来てもいいと思いますよ~。気持ちが高まってきたら前の方に来て下さい(笑)

おねがいしまーす。

そんな感じで、ヘンミさんについてみんなにもっと詳しく知ってもらおうということで。まず最初は、どうして今回この展示をすることになったかということを聞いてもいいですか?

はい、大丈夫です。

はい(笑)

もっと細かいフェーズで教えてほしい(笑)

たしかにザックリしてるね(笑) どうしよう(笑)

(ええ~・・・笑)

えーっと、ちょっと待って待って。そういうのダメ(笑) ちゃんと頑張る頑張る。そうだなあ。ヘンミさんと話したじゃないですか。このトークショーをやると決めたときに。お話をいただいたときにヘンミさんと話したのね。最初すごいヘンミさんって、クールな感じ? ガチガチな思考をお持ちの方なのかなって思ってたの。

頑固みたいな?

そうそうそうそう! 「曲げないぞ!」みたいなところあるのかなと思ってたんですけど、絵とヘンミさん自身にいい感じの・・・。何て言えばいいんだろう(笑) 印象と違って、ヘンミさんの思ってることを聞くと、やわらかい感じになると思うので。そこら辺を話したいんですよ。

はい、お願いします(笑)

えーと、どうしよう。うーんと。

とりあえず、個展をなんでやったかを話しましょうか(笑)

お願いします(笑)

はい。個展は今年2016年に絶対にやりたかったんですよ。なんでかというと、前の年が体調不良で絵を描くこととかも全然できてなかったんです。でも、2016年になったときくらいからすごく元気になってきて、体調も良くなってきて、「これはもうやるしかない!」って思って。絵を描いたりとか人と会ったりとかして。ライブペインティングも、今年に入ってからイベントに出演するようになってきて色んな人に見てもらえるようになったので、集大成を出そうかなというので年末にやろうという感じで決めて制作をしてきました。

なるほど。けっこうライブペイントやってますよね。

やってますねえ。

こないだも、下北とか?

下北沢とか、あと大阪に行ってやったりとかしてました。

そのときにも音楽とライブペイントみたいな感じで?

普通のときのライブペイントのイベントは、音楽が無いんですよ。普通に道端とかでやるんです。

それは、ゲリラ的な?

いや、アートフェスの中でストリートでやるとか、大きいホールを貸し切ってその一角でやるとかです。けど、そうなってくると人通りは激しいんだけど、ずっとは見てもらえない。

あ~、流し見みたいな?

流し見みたいのが多かったんで、けっこうコロコロ絵の印象が変わる絵を描いた方が、人が見てくれるんじゃないかなという気がしました。

あたし、ヘンミさんのinstaglamで下北沢でのライブペイントの様子を拝見したんですけど、物語まではいかないけど何となくストーリーがある感じ。時間とともに変わってくの。絵が。消したり描いたりしてて、絵が変わっていって最終的に何かになるみたいな感じで、その過程が面白いなと思って見させてもらいました。今回も、それに近い感じがありました。

そうですね。金の紙を買ってきて、あんま使いどころがなくてずっと放置をしてたんですよ。

そうだったんだ! ライブペイントってだいたい白から描くじゃないですか。今日は金色の紙だったから、あたし勝手にこっちの絵とリンクしてるのかと思ってました。

あ~。これを描いたときに、金色を塗って白を重ねると、「釉薬(ゆうやく)」みたいになるなと思って。焼き物とかで金地にガラスの絵の具みたいなのが垂れてるような器とかあるじゃないですか。あれがけっこう好きなので、綺麗だなと思ってて、それを絵で再現してみたいなと思ってこの絵を描いたので、そこからの流れでやってみようかなと思って。

あ、やっぱりそうだったんだ。こっちの絵と、黒い丸が描かれてるところとかも繋がってるなと思って見てました。でもけっこう、他の絵にも出てきてますね。丸っていう形。

そうですね。

これは、何かありますか?

今回、絵にいっぱい丸があるんですけど、一番入り口近くにある絵が今回の個展のDMのオモテ面に掲載した絵なんです。私の勤め先の喫煙所の灰皿に、あの絵のような感じの焦げ付きがあって。丸い形に焦げてて。それが綺麗だなと思ってから、丸をいっぱい描いてみようかなと思って、だから今回、丸がたくさんあるのかもしれないです。

ていうことは、あの一番入り口に近いところにある絵は、それ(灰皿の焦げ付き)をモチーフにして具象的に描いてる?

モチーフというか発想が、灰皿の焦げ付きを1回気になって、何回か寝たり起きたり仕事行ったりって繰り返している間も忘れられなくて。何となく頭のなかに覚えてるけれど、明確じゃないくらいで、それをちょっと思い出し描きしてみようかなってくらいの感じで。一応モチーフなんだけど、ちょっと別のものにはやっぱりなってるなと。

さっき、具象と抽象という言葉を出したんですけど、ヘンミさんはグラフィックもやってるじゃないですか。

やってます。

今回、グラフィックのものってありますか?

あります。まだ全然なんですけど、今日来てくださった方々にお願いがあるんですけども、今回グラフィックの展示をしようってなったときに「ヘンミモリ」って描いてあるステッカーを作ったんですよ。ちょっと反則になってしまうんですけど、丸とか図形が煙になってフワフワって溶けていくようなグラフィックを最近作っていて。これを「図形の死」シリーズっていう名前を勝手に付けて何個か発表してるんですけど、それを使った白黒のステッカーを作ったんです。それを来てくださった方々に貼っていってもらいたいんですよ。80枚くらい刷ったので、それを後でいいのであそこの壁に貼っていってほしいんです。

それは、どこでもいい?

あそこの壁紙みたいなところの中だったらどこでもいいから、貼っていってほしくて。で、ネタばらしをしちゃってもいいと思うので言っちゃいますけど、今日が初日で、これから一週間の間に来てくださった方々に一枚一枚貼っていってもらおうかなと。イメージは、渋谷とか新宿とかの電柱に貼ってある変なステッカーみたいなのあるじゃないですか。

貼ってある~!

あれと同じような状況にしたいんですよ。

落書きじゃないけど、みんなが好きに貼ったりする感じ?

そう、好きに貼ってあったり、自分がここに貼るぞと思ったところに貼ってもらったりとか、人が貼っている上から貼っちゃってもいいと思ってて。路上にステッカーを貼ってる人と同じような感じで。

みなさん貼って帰ってくださいね。

最終日に貼っていってもらったステッカーの上から、私が絵を描いていこうと思って。なんでかっていうと、今までグラフィックって情報伝達とかアイコンとしての役割が強いから、なるべく色んな人が分かったり、色んな人が「あ、ヘンミモリのステッカーだ」って分かって、色んな人が手にとってどこかしらに貼っていくということができればできるほどデザインとしては正解だと思ってるんですよ。グラフィックとして正解だと思ってるから、それをまずやってもらって、6日間終わらせたいんですよね。そのあとに、私が一筆入れたりとか絵の具を垂らすことによって、その壁がコラージュになる。今までグラフィックに一つ一つ意味があったものが、グラフィックの一つ一つは「要素」になるから、一つの絵になる。

うんうんうん。最後はヘンミさんが仕上げるということですよね。

最後に仕上げて、ちゃんと絵に落とし込んだら、今までデザインとして展示してたものが最終日に芸術の作品にメタモルフォーゼするなと思ってて、それを今回ちょっとやろうかなと思って。

おお~。じゃあ最終日までのお楽しみ。

そうですね。最終日はのんびり絵を描いて終わらせようかなと思ってたので。

ぜひ、最終日も見に来て下さい。ところで、あたし夏にヘンミさんのスイカのTシャツ着てたんですよね。これ、けっこうヘンミさんのグラフィックで印象的なものだなと思ってて、果物シリーズのやつ。これも、分かりやすいものとしてのグラフィックでしか?

そうです。これは、スイカから煙が出てるというか、スイカが煙ってるっていうグラフィックをパソコンで作ったんですよ。最初は普通のコラージュとか、多重露光写真という形で作品を作るというのをやってたんですけど、複雑になっちゃって飽きるんですよ。複雑なものってなんか。例えば、「スイカから煙が出てる」っていうのは、「スイカ」と「煙」しかなくて。二つしか情報がないから頭が混乱しないなと思ってこういうシンプルなものも作り始めていますね。

この煙っていうのは、ヘンミさんが意図してる煙?

意図してる煙です。

あ、そうなんだ! この煙の溶けてる感じとかもそうだけど、ヘンミさんのものって完全なものを不完全にしたりとか、そういう風なやりとりを楽しんでる感じがして。丸だったら丸で終わらせるのではなくて、あえて壊してみるっていうのは、どういう気持ち?笑

どういう気持ち?笑 何だろうなあ。私はけっこう海の方の生まれなんですよ。宮城県石巻市の生まれなんですね。港町って風が強いし、潮風だからトタンの屋根とかが錆びていくんですよ。その錆とかをずっと見てると、風合いがおしゃれだなとかカッコいいなあと思って。綺麗なトタンよりも、ちょっと錆びてるトタンの方が好きだったりするんです。それがけっこう根付いてるのか、完璧なものよりも、例えば「綺麗な真っ白な壁」よりも「ちょっと汚れてる壁」とかの方が好きだったりするんですよ。それは絵の中でも何となく表れてて、シミみたいな、ちょっと汚いかもしれないんですけど、カビとか日焼けしてる紙とか、「本当はそういう姿では提供されていないのに、自然と劣化したりとか、経年してそういう風になっちゃった」というものに愛着を感じるので。そこで、完全なものを不完全にしたいという欲求が出ているのかもしれないですね。

なるほど。錆とかカビとかって日常的に身の回りにあるものじゃないですか。ヘンミさんのDMに「パンから黴が生えていた。メッキが剥げた。カップがひび割れた。メタモルフォシス(変容)は生活にある。私はそれを表現したい。」って書いてあったじゃないですか。生活の身の回りにあるものをモチーフに描いてるのは、けっこう前からそうなんですか?

前からそうです。そうだ、そのステイトメントが入り口近くにあるんで、皆さんに配っちゃったほうがいいかも。

あ、どこにあるんだろう?

入り口にあるんですよ。

じゃあ、それをみんなが見た方が分かりやすいかも。是非とも。回してもらって。すいません、お願いします。みんなちょっと緊張してる? 緊張しているのは私かもしれないけど、まだほぐれない感じがありますので、もうちょっとゆるゆるな感じでやりたい!

これが、「今回の展示に寄せて」みたいな感じの文章なんです。

ヘンミさんと話すまで、ヘンミさんの絵が抽象的だなと思っていたから、そのモチーフを聞くまではそういうところからヒントを得ているって思ってなくて。だからそれがすごい意外だなって思ったんですよ。一つ一つ、私たちの日常の周りにあるものだったりしてるから、みんなそれを知ると楽しいかなって思うんです。でも、私はそうなんですけど、絵に対してこれはこうだよって説明したくなくないですか?笑

そう・・・ですねえ。うーん。私はずーっと抽象画を描いていて、最初の頃は説明無しにポンと出しちゃってて、タイトルとかもいまはちゃんとした日本語のタイトルを付けはじめたんですけど、それまでは架空の物質名とかを考えてたんですよ。

それも、ちょっと気になるけど~! 例えばどんな感じ?

ちょっと中二病っぽいんですけど、英語辞典とかで入れても絶対ヒットしないやつ。「MEEM」で「めーむ」って読ませるみたいな(笑)

ありそうありそう。

でも無いんですよ、その単語は。英語に無いから、じゃあそれを付けちゃおうって。

へえ~。「ヘンミ語」を付けてたわけですね。

そうですね。勝手に付けてました(笑)

なるほど(笑) その不思議な感じの、架空のタイトルを付けなくなったきっかけみたいなのってありますか?

私の、自分のモチーフがあるとか、モチーフが無いとかっていうことに全然気づいてなくて。最初は、勝手に自分で物質を作っているんだっていう気持ちだからそういうタイトルを付けてたんですけど、途中から「あれ、やっぱこれってあの時見た壁を意識して描いてるんじゃないかなあ」とか、「この感じってなんか、見たことあるな」っていうのがけっこう多かったので、やっぱり自分の中でちゃんとモチーフがあって、それを抽象画っぽく描いているということに思いが至ったから、ちゃんとタイトルを付けようっていう流れになりました。

へえ~! それって、見る人に対してもそういうきっかけを与えようと思って?

思いました。それは。すごく変な話をするかもしれないんですけど、やっぱり見てもらうことが一番大事だなって思ってて。

それそれ!笑

タイトルが結局、これはいま思ったんですけど、タイトルが分かんなかったら分かんないんですよ(笑) やっぱり自分が知ってる単語とか、自分が知ってる言葉がタイトルにあると、例えば「夏」っていうタイトルで青い絵だったら、「この『夏』の青って、もしかしたら海の青かな?」とか。連想してくれるんじゃないかなって思ったから、ちゃんと日本語の単語で付けようって思って。

うんうん♪

で、なおかつ英語でも付けて。いろんな人に分かってもらいたいなと思いました。

なるほど~。ところで、この重ねてる感じとかって、意識的に重ねてます?

意識的です。

これって何を使って描いてるんだろう?

今回の展示もそうですし、最近ずっと作ってるのは、「蜜蝋」って分かりますかね? 蜂が作る蝋、蜜蝋っていうのがあるんですけど、それを使ってるんですよ。ずっと。絵を描くときに。

溶かしたりして大変なやつだよね。

一人用のホットプレートとかで、蜜蝋をグツグツして、マスクしてそれをずっと壁に塗りたくるというのをやってます。

この質感が、ヘンミさんらしさを強く出してるじゃないですか。それって本物に寄せようとか、、そういう意識ではなくて?

全然。そうではないですね。

私、肌みたいにも見えるなと思ったりとか、壁みたいにも見えるし、色んなものに見えるじゃないですか。重ねてるし、でも一つ一つモチーフは違うんだろうなっていうのが分かるし。これの感じは、何て言う・・・。この語彙力ね、私の(笑) えーっとねえ、面白いなと思ってるんですけど、それを何て表せばいいんだろう。この蜜蝋を使い始めたのは?

ここ一年ですね。

あ、やっぱりそうなんだー。じゃあ、タイトルを付けるようになったのと共にですか?

そうですそうです。

それまではどういう?

いま24歳なんですよ。大学に行ってたのが2年前、3年前くらいなんですけど、大学生の時は版画のシルクスクリーン印刷というのを専攻してたんです。それは、Tシャツとかでハッキリ色が出てるTシャツを作る時に使う、ステンシルみたいなやり方をして作る版画なんですけど、それをやってる時もずっと「重ねて、削る」ということをやってたんですよ。同じ色をずっと重ねたりとか、赤い面、黄色い面、青い面ってどんどん重ねていって、それを最後に針とかで引っ掻いたりとか。一番上は青なんだけど、一番下にある赤がそこから浮いて見えるとか、覗いて見えるみたいなやり方をしてたんです。層を成すものとか、何回も何回も重ねていっていくこと。ステイトメントにも書いたんですけど、「変容の始まり・変容する過程・変容の終わり、それらは時間の蓄積で、物質的な層の蓄積でもある。」とあるようにそういう意識なんですよね。インクを重ねていくのと一緒に、例えば制作に3日かかるとしたら自分の3日分の時間がそこにも蓄積していくんだろうなという意識があるから。

なるほど。そういうことか。ルーツじゃないけど、版画の時からあまり意識は変わっていないんですね。

変わってないですね。全然変わってない。

そうなんだ。なるほど。

「メタモルフォシスと飽和」って、「メタモルフォシス」は分かるけど、なんで「飽和」って付けたのか分かんないってけっこう友達とかに言われたんです。結局、ステイトメントに書いてあることそのままなんですけど、たくさん重ねていっても、私がその時どう思って作品を作ったのかっていうことは分かんないじゃないですか、誰も。でもそれは普通の絵も一緒で、言われなきゃ分かんない。「悲しい絵」とか「これは明るい絵だよ」とか、「これは私がお菓子を食べてうれしくて、テンション上がってる時に描いた絵なんだ」とかは言われないと分かんないけど、いっぱいいっぱい重ねてったら、もしかしたらちょっとはにじみ出てくるんじゃないかなあって思ってて、それを意図的に私は削ったりして出していきたいなと思ったから。「飽和」っていうのは、飽和点っていう、水がどんどん吸い込んで吸い込んでいって最終的にジワ~ってにじんでしまった瞬間のことで、理科の実験とかでもやったと思うんですけど、そのぐらいがちょうどいい塩梅で人に伝わるんじゃないかなあっていうのを意識して、今回そういうタイトルにしたんです。

そっか。・・・・・・。えーっと・・・・・・。えっとねえ。えっとねえ。みんなが不安そうな顔してる(笑)

大丈夫大丈夫。おしゃべりをしよう。

おしゃべりをしよう(笑) えーっと、具象と抽象の狭間みたいなところ? 「悲しい時に描いた絵だ」っていうのは言われなくちゃ分からないって、さっきヘンミちゃんが言ったこと? なんか、そういうあの~・・・。

もう、思いついたことは全部言っちゃえばいいんじゃない?

言っちゃえばいいのかな? でも言うと大変なことになるかも(笑)

敵を作るかもしれない?笑

いやいや、敵はね(笑) 敵は作んないけど(笑) みんな、「はて? はて?」ってなっちゃうから。

分かりやすくー。

そう、分かりやすい私でいようと思って、私も心がけております。

それはすごく大事!

そう、大切でしょ! やっぱり、あたしそのー、アイドルをやってるんですけど、おやすみホログラムっていうグループでね。アイドルをやってるのに絵を描いたりとか、美術の方面でもいろいろ活動しはじめてて、けっこう言われるんですよ「手先が器用なアイドル」的な感じで。私の中で「アイドル」というものと、自分の作る「作品」というのは、同時進行で。作品の一部、表現の一部としてアイドルっていう方法を取っているんです。あたしも、普段のあたしだと分かりづらくって、気持ちとかも「あたしこんな気持ちで描きました」って言っても、「はあ・・・」ってなるじゃないですか(笑) ということで、わたしも分かりやすく、自分を分かりやすいものとするために、アイドルという方法を取ってるんですけど、けっこうヘンミちゃんもキャラクター的なところありますよね。

あ~。多分、八月ちゃんが「ヘンミさんってもっと頑固な感じというか、芯が通り過ぎてて独特の世界観にハマっちゃってる人」みたいに言ってて・・・

いや、そこまでは言ってないです!!!笑

とりあえず、そういう感じで。

そう、頑固な感じで、信念を持って取り組んでる方なのかなと思ってたから。あたし、アイドルやりながら美術をやってると、「なにを片手間に!!」って言われたりとかするんだけど、そういう私みたいなのを嫌がっちゃうのかなと思って最初はびくびくしていたの(笑) だけどそんなことなくって、むしろそういうところにけっこう貪欲ですよね。

そうですね。八月ちゃんの話をまたすると、私はけっこう八月ちゃんのやってること込みでファンというか、すごく好きだなという気持ちがありまして。なんでかというと、自分がやりたいことがあるとしたら、そこに行くまでの選択肢がいっぱいあった方が絶対に良いと思うんです。別に、美術で大成したいから絵を絶対にやらないとダメとかは無いと思ってるんですよ。歌手からスタートして絵の方に行くことだって絶対あるし、いろんな方向からアプローチをできる人ってすごいカッコいいなって思ってて。しかも、それのために、「キャラクター作り」って言っちゃうとあれだけど・・・。

商業的に聞こえちゃうからね(笑)

うん、それとはまた違うんだけど、自分がこう思われたらとか、こう思ってくれるんじゃないかとか、そこまで考えられる人? 例えば、私は今、軍服みたいなミリタリーのジャケットとかを着ていると、そういうの好きな人たちが寄ってくるんじゃないかなとか。

え、マジ!?笑

分かんないけど、カーキが好きな人寄ってくるんじゃないかとか。いや、別に本気でミリタリー好きが寄ってくるとは思ってないけど(笑)

あ! たとえ話か(笑) そこまでトータルコーディネートしているのかとびっくりした(笑)

うん。でも実際にだいぶ考えたかも。別に自分の容姿をどうこう言う必要は全くないけども、私はいわゆる「可愛い系」ではないので、顔がキリっとしているタイプなんですけども、「それだったらメイクとかもタレ目にしないでつり上げとけ!」みたいな(笑) そっちの方が潔いというか、元ある素材をいかに生かすかということになってきているから、そこに尽きるかもしれない。

ファッション的なこととかも、全部に通じているというか、それも全部含めて「ヘンミモリ」っていうこと?

そうかもしれない。もしかしたらそこまで考えてないかもしれないけど、みんがが「ヘンミモリってこういう人だよね」って思ってくれるのだとしたら、たぶんそういうことなんだろうなって思うようになって。変に反発心が無くなってくるんですよ。私は、例えば「白い服を着なそう」ってよく人に言われるんですよ。着なそうって言われて、それが10人中6人とかだったら、「もう着ないでやろう」って思ってしまう(笑) 自分の中で言われることが分かってるから、「それに応じてやるよ」みたいなところがあるのかもしれない(笑) そこって別にどうでもよくて、私が思うのは、色んな人がいろいろ言ってくるから、言われたものをやっちゃえばいいかなって思い始めちゃってるところがあるんですよ。

何て言うんだろう、スポンジみたいな感じ?

そうスポンジみたいな感じだから、さっきの多数決理論でいくと、10人中8人が「あなたは黒が似合う」って言ったら、もう黒ばっか着てやろうとか。でも、それって自分が頓着が無いというわけではなくて、別に重要じゃないからなんですよ。そこが。

あ~。一番重要なのは、出してる作品だったりっていうこと?

考えてることとか、考えてることを実現しようと思って絵を描きましたってなったら、そっちの方が重要なので、その時あたしがどんな服を着てても正直関係ないかなと思ってるから。だったら、みんなが「似合う」というものを着た方が、「似合う」って言ってる人が来た時に「あ、やっぱ似合う!」と思うかなって(笑)

なるほど(笑)

最近もう、絵をずっと描いてるけど、頭は左脳人間みたいな感じになってきているかもしれない。

左脳だと・・・・・・、勉強の方!!!

(笑)

いまちょっと、おかしなとこあったね(笑) いや、分かるよ。左脳分かる!笑

私の絵は、「おらー!」って描いてるように見えるんだけど、すごい計算して描いたりとかしてて。なんか、ちゃんと設計図を書くんですよ。抽象画のくせに。抽象画のくせにっていう言い方はアレだけど。抽象画って言ってるけれど、「最初にここにまず金を塗って・・・」みたいなことをノート1ページくらいに全部書いちゃうんです。

それって文字?

文字で書いちゃう。

計算の式みたいな?

設計図みたいなのを最初に作ってから絵を描いちゃう。

この(展示されている絵を指さしながら)、丸の配置とかのことも考えてたりとかするんですか?

うん、ずっと考えてる。仕事中に考えてた(笑)

おわあ~。そっかあ。そうなってくると、またいろんな解釈が出てくる気がする。

50%くらいはその設計図に沿おうという気持ちがあるんだけど、あとの50%は「まあいっか」っていう気持ちもあるから。やっぱりそれの通りにはいかないから、ある程度アクシデントがあったりとか、「あ、これカッコいいな」と思ったものはちゃんと取り入れようっていう気持ちがあるので、設計図はちゃんとあるんだけど、けっこう自由のある設計図だなあとは思うかもしれない。

うんうんうん。なるほど。そっかあ。えーっと、みなさん。質問等ありますか?

(はい)

はい! どうぞ。

(あの、ヘンミさんに質問なんですけど、層の蓄積を作品にするとなると、いくらでも継続できるじゃないですか。どこで終わりにするかとか、いつ完成として区切るのかっていうのを聞いてみたいです。)

あ~。さっき、50%50%の話をしたんですけど、それは終わらせ方にもけっこう関わってくるんですよ。なんでかというと、設計図のままに描いていくと、たぶん際限なく理想を突き詰め続けなければいけないというのがあって。「いまここまで描いたけど、そこからまたより良くするためにってどんどんやっていこう」ってなると、たぶんどんどんやることが増えていって、最終的に絵が終わらないってなりそうですよね。だけど、私の中で「自由にしてもいい50%」というのを設けているので、「もうここがカッコいいな」って思った瞬間に、もう止めちゃうんですよね。私は昔、余白のある絵が描けなくて、なんでかというと怖いからなんですよ。余白があると描かなきゃって思っちゃって、描いてたんですよ。たぶんその時は、どんどん蓄積をしていってる状態なんですよね。でも、カッコいいと思ったらやめようっていう気持ちがあるから、止められるようになった。本当にそれだけなんです。

(ありがとうございます!)

え、そのさあ、決めてる50%って後半に付いてくるもの? それとも、前半?

前半。

じゃあ、後半戦は本当に感覚的なところで勝負してるの?

そうねえ。そういうやり方をずっとしてますね~。ご質問ありがとうございます。

たしかに、その終わり方って難しいですよね。いいなと思ったところで止めるっていうのは分かるかもしれない。けど、それってやっぱ、ヘンミちゃんの感覚で、人それぞれの感覚がある中でそれをバン!と出すのって爽快だよね。

具体的に言うとあれです。まず「よし、OK! これでカッコいい」というところで寝て、朝起きた時にもカッコいいと思ったら、もうそれはカッコいい。朝起きて、なんかちょっと足りないなと思ったら、描くかもしれない。

うんうんうん。あのー、私の個人的な質問をしてもいいですか?

どうぞー。

質問ていうか、あたしあのねー、絵を描いて途中で「あ、これ終わらないや」って投げ出してる絵がいくつも溜まってるんですけど、そういうのってないですか?

えーっと、今日は7作品出していて、昨日終わった作品が3個あります(笑)

ええ! どれとどれ~?笑

ドットがいっぱいあるやつは昨日終わったし、これも昨日終わったかもしれない(笑) けっこう、間を置いたりするんですよ。私の中で、最初はカッコいいって思ったんだけど、もしかしたらカッコよくなくなる瞬間があるかもしれないって思って、置いてる時間かもしれなくて。昨日ちょっと見たら、「もうちょっとカッコよくなるな」って思ったから、描き足した。これは今日で出すし、絶対に完成って言わないといけないから、締切があったからそれができたと思ってるから、八月ちゃんも締切を自分で設けたらできるかも(笑)

そうだよねえ。そうかもしれない(笑) ちゃんと、決めよ♪笑

決めてください(笑)

そんな感じで、あの、トークショーが。これ、トークショーかなあ?笑 お話会?

八月ちゃんと楽しくお話をする会!笑

お話会が、もうほぼほぼ。あと10分くらい? 質問とかかなあ? やっぱり。

質問してもらえるのかなあ。

なんか、ある人は・・・。あ! ある! お願いします。

(今までシルクスクリーンとか、グラフィック作品とかコラージュを作って、今回は蜜蝋を使った作品だったんですけど、今後はどういう展開で作品作りをしていきたいかというのはありますか?)

なるほど。ありがとうございます。今までやってきたものって、もうスキルとしてあるから、継続してできる状態じゃないですか。グラフィックに関しては、最近仕事で動画を作り始めているので、動画に転用したら面白いんじゃないかっていうグラフィックを動画化してみるというのをやりたいです。今まで作ってた、たとえばスイカから煙が出ているグラフィックで言えば、ちゃんと煙が出ててスイカがなくなっていく動画を作ってみようかなとか。そういう方向でグラフィックは進めていきたいです。いっぱい色んな人に見てもらえそうな気もするし(笑) 自分が新しい知識を得るのが好きなので、まずは動画をやってみたいのと、コラージュは継続してやりたいので、夢として、アパレルブランドで自分の作ったコラージュとかを使ってほしいので、じゃんじゃん売り込みに行こうかと思ってるんですよ。なので、アパレルブランドの人がいたら・・(笑)

生地にしたい?

生地にしたい。誰かが着てて、それをちゃんとプロダクトとして使ってくれてたら、それはデザインとして絶対成功だと思っているから。例えばワンピースとかに自分の作ったドットとかのパターンをやってもらって、それをちゃんと製品化してみたい。っていう意識があります。で、絵に関しては、蜜蝋が面白いのでどんどん蜜蝋をやっていこうかなあと思ってます。そんな感じです。ありがとうございます。

素晴らしい。最後っぽい質問が来て、ありがとうございます。

そうだ、これを紹介してもらおう。

あ、そうだ。ヘンミモリステッカー。これグラフィックのやつ。

グラフィックのステッカーを4種類作ったんですけど、無駄にハイスペックにしてしまって、耐水性があって、貼ってはがせるってやつにしたんで(笑)

え! すごーい!!

色んな所にペタッて貼っても、飽きたら剥がせるし、色んな所に出せるっていう風にしたので。一枚300円で、4枚セットで作ったので4枚で1000円にしたので。もし買っていただけるのであれば、お声掛けをしていただけると嬉しいです。

ぜひとも。貼ってはがせるタイプのシールを作ってる人を、あたし初めて見たかもしれない(笑) だいたいみんな剥がせないよ!笑

あんまりよく分かんなかったから、一番良さそうなのにした(笑) 紙がちゃんと綺麗なやつにしようと思って。ちょっと奮発をしてしまったというわけです。名刺とかも入口の付近に置いてあるので興味を持っていただけた方は持っていってほしいです。シールは丸が溶けているものなどがあります。あとは、八月ちゃんがもらってくれた、スイカが煙になっているグラフィックのポストカード。これは季節はずれなので100円で売ります(笑) 何かありましたら是非。あとは、一人1枚ステッカーを「メタモルフォシス」の紙に貼って帰ってください。

みなさん、ぜひとも貼って帰ってください。すごいたのしみ。では、こんな感じで大丈夫でしたか?

大丈夫ですよ~。ありがとうございました(笑)

よかったー(笑) すごい緊張してたの、意外に。意外にっていうか緊張してたの(笑) そんな感じで、ヘンミちゃん、個展おめでとうございます!!

ありがとうございました。八月ちゃんもありがとうございました~。

 

**************

 

以上、トークの記録でした。

ヘンミモリさんの個展「メタモルフォシスと飽和」は、いよいよ明日、12月10日までです。最終日に完成する半インスタレーションの作品の行く末を見届けつつ、皆さんヘンミさんの世界をご覧になってはいかがでしょうか。

ヘンミさんのステイトメントは、本日ヘンミさんが自身のtwitterで画像で上げておられました。

 

そしてこちらが、ヘンミモリステッカーとポストカード。かっこいい・・・。

 

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 こちらが、DMです。職場の灰皿の焦げ付きに着想を得たという絵が掲載されています。

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