2017年に読んだ主な本たち
もう2018年の1月も終わり、2月に突入してしまっているんですけど、昨年の読書メモを。 一年分をまとめて振り返ろうとすると時間がかかるし、上半期に読んだものを思い出すのに手間がかかるのでよくないということが分かりました・・・。結局思い出せなかった本もあったり。今年からは、半年ごとに読書メモを付けねば。
2018年は、最近遠ざかってしまっている文学研究の本をもっと読みたい。
夢眠ねむ『本の本 夢眠書店、はじめます』(新潮社)
本についての、紙のドキュメンタリーといった趣の一冊。書店、出版社、流通センター、雑誌の編集、校閲、装幀といった本を取り巻くプロの仕事人に夢眠さんが直撃しています。読みながら、一緒に出版の世界を冒険している気持ちになれます。本を愛するすべての人にとってはもちろんですが、例えば業界研究をしたい学生さんにとっても、すごくためになる素晴らしい一冊だと思います。
姫乃たま『職業としての地下アイドル』 (朝日新書)
地下アイドルの実態に、非常に丁寧に迫った新書です。姫乃さん自身のエッセイのような文章も織り交ぜつつ、地下アイドルを対象に行ったアンケートが分析されていきます。誤解や偏見に満ちた眼差しにさらされがちな地下アイドル界隈ですが、そうした誤解や偏見を優しく解きほぐしていく著者の誠実な姿勢に胸を打たれます。
以前、当ブログで長めの感想を書いたことがあるのでそちらも貼っておきます。
姫乃さんは、今後も著書の刊行のご予定があるらしく、そちらも楽しみです。
阿部公彦『幼さという戦略 「かわいい」と成熟の物語作法』(朝日選書)
「かわいい」の濫用をめぐる考察が特に面白い。「かわいい」について論じた本は他にもあるけれど、阿部さんの手つきが一番私の好みです。
佐藤究『Ank:a mirroring ape』 (講談社)
京都が舞台。新しいタイプのSFパニックもの。ゾンビは一切登場しません。翻訳されることを意識していそうな文体であったり、映像化されることすらも意識していそうな書き方に、筆者の志の高さを感じました。凄惨な場面もあるのだけれども、怖いというよりは、「一体なぜこんなことに?」という好奇心の方が勝るのでグイグイ読み進めていけます。途中でトリックの想像がついてしまうのだけれども、ちゃんと最後まで読ませる筆力がすごいです。
アニメが面白かったので、原作の小説を一気読みしました。 『皇国の守護者』の作者である佐藤大輔氏が没したのが2017年の3月のことでしたが、佐藤大輔ロスを癒すかのごとく、カルロ・ゼン氏が頭角を現してくれてありがとうございます!という気持ちです。年明けに発売された9巻も楽しませてもらいました。てっきり、クーデターか革命かという流れになるのかと思いましたが、まだそこまで事態は逼迫せず。
ところどころ、言葉の誤用が散見されるし、同じ言い回しを使い過ぎていたりもするのだけど、筆者なりにくどくならないように工夫しようとしているのは伝わります。細部の傷が気にならなくなるくらい「読ませる」ストーリーを書ける人なので、一気読みできました。しかし、佐藤大輔『皇国の守護者』の方が面白いのは間違いない。
津村紀久子『エヴリシング・フロウズ』(文春文庫)
青春を描いているんだけど、「アツさ」で煮しめられていない、さっぱりとした青春小説。冷静な筆致が、ひねくれた生き方をしてきた私の心に優しく寄り添ってくれました。
チャイナ・ミエヴィル『オクトーバー:物語ロシア革命』
ロシア革命について物語形式で迫った一冊。かなり取材がなされたうえで書かれているので、すごい細かい。筆者はSF作家です。革命を果たした側の、革命後の内部闘争ってこんなに激しかったのかと驚きました。
黒田龍之助『初級ロシア語文法』
粘り強く、繰り返し勉強しています・・・。早く一角に読み書きできるようになりたい! この参考書の良いところは、「難解」というイメージを持たれがちなロシア語文法の、実はとっても合理的でシンプルな部分を分かりやすく指摘し、「恐れることは無い!」と励ましながらレクチャーしてくれる点だと思います。
黒田龍之助『寝るまえ5分の外国語:語学書書評集』
語学書の書評集。黒田先生の語学に対する造詣の深さに唸るための本。『初級ロシア語文法』と共に、今まで軽視していたパスポート露和辞典を見直すきっかけにもなりました。
板谷敏彦『日本人のための第一次世界大戦史 世界はなぜ戦争に突入したのか』
第一次世界大戦の開戦前の社会状況を振り返りながら、その歴史が丁寧に記述されていく良書です。テクノロジーの発達、新しいメディアの登場などがいかに影響を与えたのかという点も見えてきます。高校生の時にこの視座があれば、もっと歴史を楽しく学べたのだろうなあと思いながら読みました。現代の情勢と第一次大戦前の情勢が少し似ているという指摘にはヒヤリとします。
一年に一度のお楽しみ『大砲とスタンプ』を、2017年も楽しませていただきました。兵器への異常な愛を感じつつも、愛くるしいキャラクター造形で楽しく読める戦争漫画です。
速水螺旋人『男爵にふさわしい銀河旅行』(新潮社)
『大砲とスタンプ』の作者によるSF&ファンタジー。時々凄惨なエピソードも挿入される『大砲とスタンプ』と違って、始終ほんわかとした気持ちで読めました。
あれよあれよという間に売れ始めているファンタジー漫画。めちゃくちゃ絵が上手い。講談社は絵の巧い作家の陳列場となりつつある気がします。
竜を狩って生計を立てている人々の物語。「龍の歯医者」の 逆(?)みたいな。飛行船の描写多めです。作者の画風からは宮崎駿愛を感じます。めちゃめちゃ絵の巧い作家さんです。
沢田新、浅井蓮次『バイオレンスアクション』小学館
面白いのかなあと思ったら面白くなかった。設定やストーリーは悪くないのかもしれないけど、絵が今一つなのかもしれません。ある敵キャラクターの造形を、映画に出てくるシリアルキラーから借りていたりするのだけれど、その辺の陳腐さに萎えてしまいました。
バイオレンスアクション(1) (ビッグコミックススペシャル)
- 作者: 浅井蓮次,沢田新
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2017/03/24
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