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【2018年版】おやすみホログラムが、とっても面白いんです。

 2016年に、おやすみホログラムの魅力をプレゼンするような記事を書いたことがありました。あれから1年以上が経ちましたが、おやすみホログラムはますます成長を続けています。 2016年のおやすみホログラムが「ピッコロ大魔王を倒したときの孫悟空」だったとしたら、2018年現在のおやすみホログラムは「ベジータを倒したときの孫悟空」並みにパワーアップしています。あんまり的確なたとえではないかもしれないけど(笑)

 見ている側が思わずハッとするような変化と成長を、本当に1日刻み、1週間刻みという速度で遂げている最近の彼らの姿には感動すら覚えます。そんな成長期真っ盛りの彼女たちですから、その魅力や特徴も微妙に変化してきているように思っています。2018年現在のおやすみホログラムの魅力(であると私が考えていること)を、あらためてここに書き残しておきたいと思います。 

 12日(月)には、無料ワンマンが控えています! 2ドリンクだけでおやホロ3ピースバンドセットのライブを楽しめるなんてお得すぎる! 重大発表もあるらしいので行くしかないっすね。

 

 以前書いたもの

lucas-kq.hatenablog.com

 

①メンバーの歌唱力の仕上がり 

 特に顕著に変わってきているのはメンバーの歌唱力だと思います。定期的に行なっているアコースティックセットのライブに行くとそれがよく分かるかと思います。ところが、最近ではバンドセットのライブに足を運んだ時にも、成長していることが明らかに分かるくらいには歌声が違います。バンドの鳴らす音に全く負けない歌声。だから、久しくおやホロのライブから足が遠ざかってしまっている方には、バンドセットのライブをぜひ観に行ってもらいたいという気持ちです。

 もちろん、歌唱力の進化は音源からもうかがうことができて、新しい作品をリリースするたびに2人がレベルアップしているのを感じます。

 

②写真や動画のアーカイブがめちゃくちゃ豊か

 おやすみホログラムは、ライブやトークイベントの動画撮影・写真撮影・録音などが自由になっている珍しいユニットです。おやホロのオタクの中には、本当に素晴らしい写真や映像を残している方が何人もいらっしゃいます。

 おやホロは東京を拠点に活動している以上、どうしても東京近郊でのライブ・イベントの本数の方が多くなってしまいます。関東から離れたところにお住まいのファンの方にとっては、そういった記録の蓄積があることの意味はとても大きいのだと思います。最近になっておやすみホログラムに興味を持たれた方にも、これまでの物語を共有しやすい環境が整っているというのは大きな魅力であると思っています。

 

③高い強度で「キャラ立ち」した2人組である

 メンバーの個性がますます際立ってきているのも魅力だと思っています。二人ともキャラクターとしての強度がすごい。髪色だったり振る舞いだったり、良い意味で対照的な2人です。ライブの時はメンバーそれぞれが思い思いのパフォーマンスをしていて、統一された振り付けなども行っていません。最近だと、八月ちゃんはニコニコしながら不思議な踊りを踊る姿が目立ち、カナミルはクールに歌い上げつつ、時にスピーカーや柵によじ登るなどして熱く観客にぶつかっていくことが多い。

 しかし、無秩序というわけでは全くありません。オガワさんの作る音楽を中心として、ゆるやかなんだけど強いつながりが確実に2人の間にはあって、綺麗なハーモニーを奏でているというか。まとっている雰囲気や、振る舞いなどは全く違う二人なんだけど、自分たちなりの考えや意図を持ち寄って「おやすみホログラム」としての表現を届けることのできるユニットになったような気がしています。 

 

④歌詞が良い

 やはり、作品そのものの良さが一番大きいのは間違いないです。たびたび書いているかもしれませんが、私がおやすみホログラムのことを好きになったきっかけは、何と言っても歌詞に魅了されたということに尽きます。 それじゃあ、おやホロの歌詞のどこが良いのだろうかといつも考えるのですが、最近になってようやく、自分なりに言語化できるようになってきた気がします。

 それは、「ポジティブ&キラキラな愛や励ましの言葉では救われない人たちを救うことができる」点なのではないかと考えています。はっきり言って、おやホロの歌詞は切なかったり暗かったりするものが圧倒的に多いです。でも、悲しい気持ちになった時に、それらの言葉が心にそっと寄り添ってくれるのです。世の中には前向きな励ましの歌や、愛を伝える歌が溢れかえっているけど、そのような言葉や音楽では救われない夜だってある。

 プロデューサーのオガワさんのソロ曲で「ナイトバード」という作品がありますが、この曲は、音楽の力を信じたい気持ちと、無力感がごちゃ混ぜになった感情が歌われているように解釈できる名曲です。

リズムで、救われたい

リズムなんかじゃ救われない

リズムから逃げ出したい

リズムなんかじゃ救われないから

小川晃一「ナイトバード」(『Hello darkness, My old friend』収録)

 こうした葛藤を作品に昇華させたこともあるオガワさんだからこそ、どうしようもない夜をハッピーにしてくれたり、あるいは悲しみに寄り添ったりすることのできる作品を生み出せるのかもしれません。

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 以上、おやすみホログラムの魅力を2018年ver.として書いてみました!

 以下に私の特に好きなライブ動画を貼っておきます。素晴らしいアーカイブたちは観切れないくらい転がっていますので、予習や復習にどうぞ。 

 

 人気曲の一つ「note」は八月ちゃんの曲だと思っています。


note/八月ちゃん+小川晃一(おやすみホログラム) 2016/10/16

 

対して、「夜、走る人」はカナミルの曲というイメージ。「呼吸を止めて静寂を見てる」から始まるセリフみたいなパートは、カナミルの声にこそよく合う!


20151018カナミル生誕「夜、走る人」カナミルソロ おやすみホログラム@下北沢シェルター

  

 2月に行われたライブからの一コマ。この日の「slow dancer」と「drifter」は、映像で観ても神懸かったアツさです。


20180204 おやすみホログラム / slow dancer 〜 Drifter at 月見ル君想フ

  

 どんどんたくましくなっていくおやすみホログラム。世界に見つけてもらえますように。

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「詞書」のある詩集 文月悠光『臆病な詩人、街へ出る。』(立東舎)を読みました

   

臆病な詩人、街へ出る。 (立東舎)

臆病な詩人、街へ出る。 (立東舎)

 

 文月悠光さんの新刊『臆病な詩人、街へ出る。』を読みました。この本は、「cakes」での連載に、新たに書き下ろした「臆病な詩人、本屋で働く。」(前後篇)を加えて一冊にまとめたものです。

 『洗礼ダイアリー』を読んだ時にも少し感じたことですが、やはり、穂村弘『現実入門』に近いコンセプトなのかなという印象を受けました。しかし、本書は実体験を下敷きにした普通のエッセイで終わっていなくて(もちろん、穂村さんも「普通の」エッセイを書く人ではないですが)、文月さんにしかできない素敵な味付けが文章の端々に感じられました。それぞれの回の中盤から結びにかけての展開が「詩」なのです。

 文月さんは詩人なのだからそれは当たり前なのかもしれません。詩人であるということは、ぬぐいがたい彼女の個性として文月さんの中に強固にあって、だからこそ彼女の書くものは、何を書いても詩になる(あるいは、詩のように読める)のだと思いました。本の中で、「さっさとやめちまえ」という罵倒のメールを送り付けられた経験が綴られていましたが(「鏡の向こうにストレートを一発」)、この罵倒は全くもってナンセンスだと思います。私たちが人間であることを辞められないのと同じ意味で、彼女は詩人を辞めることができないんじゃないか。本書を読みながらそんなことを考えたりしました。

 本当に様々なお話が収録されているのですが、ショッキングな出来事・心無い言葉を浴びせられた出来事を冷静に振り返って、自分自身の気持ちを整理していくお話もあれば、未知の世界に突撃して蒙が啓かれていくまでを綴ったお話も収められていました。

 様々な人たちとの対話を重ねていく経験を通じて文月さんの世界観が少しずつ変化していく過程が面白かったです(何回も「くらくら」していたのが特に印象的)。他方で、ある面では変わらずに生きていくことを確認したりもしていて、「成長」や「気付き」を無理強いしがちな社会に疲れてしまった人の心にも、優しく寄り添ってくれる本だと思いました。

 各エピソードの結び方がいずれも美しくて、「エッセイ」でありながらも「詩をしている」感じが、読んでいて心地よかったです。まるで、「詞書」*1のある詩集を読んでいるような気持ちになりました。詩がこぼれ出す瞬間に立ち会う、紙のドキュメンタリーみたいな。

 「私は詩人じゃなかったら『娼婦』になっていたのか?」は非常に読みごたえがあって好きなのですが、「臆病な詩人がアイドルオーディションに出てみたら」が一番心に残りました。私がアイドル好きであることによるバイアスが大いにあるとは思いますが、全人類に読んでほしい。特に、文月さんなりの「アイドル」の定義が示される次の一節に胸を打たれました。

 

私がミスiDに出たのは、「本気で詩を書いています」と自分の口で宣言したかったからだ。「私もアイドル(=本気*2で闘ってる女の子)なんだよ」と。(P219)

 

 「本気で闘ってる女の子」という表現に、自分がなぜアイドルに惹かれているのかという問いへの答えを見たような気がしました。私たちは日々の暮らしの中で、時には闘わざるを得なくなることがあるわけで、そうして打ちひしがれた時などに、同じように「本気で闘ってる」人の姿を見ることは大きな励みになると思うのです。多分、そこには、「女の子」であるか「男の子」であるかは関係ないのだとも思います。しんどいことも多々降りかかるこの世界で、「共闘」している仲間のような存在がいることを確かめて、励みにしたい。だから私はアイドルや、アイドルの現場に惹かれるのかもしれません。

 私は『臆病な詩人、街へ出る。』の読書体験を通じて、期せずしてオタクとしての衝動の根源を見つけさせてもらいました(笑) おやすみホログラムがなぜ尊いのか、中島健人君がなぜ尊いのかが分かりました!笑 当然ながら、どんな扉が開かれるかは人によって違うと思うので、たくさんの人に読んでほしいと思いました。興味を持たれた方はぜひ! 

 

『洗礼ダイアリー』を読んだ時の感想です 。こちらもオススメ!

lucas-kq.hatenablog.com

 

 

*1:和歌が詠まれた時や場所、いきさつなどを説明した文章。

*2:本文では「マジ」というルビが振られています