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板につく瞬間を想像するだけで末恐ろしい。見逃してはいけない作品。 『フォビア』(作:原克玄/画:ゴトウユキコ)第1話感想

 ビッグコミックスペリオールにて連載されているホラー漫画、『フォビア』が面白い。昨年の12月下旬から始まった新連載である。(たぶん)毎回、1話完結で何らかの恐怖症にスポットを当ててストーリーが展開されていくサイコホラーとなっている。

 作画を担当しているゴトウユキコ氏は、昨年(2020年)完結した『夫のちんぽが入らない』(原作こだま)の連載が記憶に新しい。この作品は同名の私小説を原作としており、ドラマ版も制作されてNETFLIXで配信された。そのドラマは今年(2021年)の1月からは地上波でも放映されている。さらに、コミックスはフランス語版も出ており、高い評価を得ている。

 その後、ゴトウ氏は、webアクションで久しぶりのオリジナル短編『天国までひとっとび』を発表したのだが、それも抜群に良かった。エロ要素などは封印した、全年齢向けファンタジー。暗いニュースの多かった2020年にあって、人々の心に暖かい灯をともしてくれるようなお話だった。大きな反響を呼び、同業者も含めて実に多くの人に読まれているようであった。 

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  あのとてつもない傑作を世に送り出した後に、次はどんな作品を発表なさるのだろうと期待に胸を膨らませていたのだが、ホラーに挑戦するということが11月に分かった時には驚いた。さらには、再び原作付きで、しかもその原作者が原克玄氏であるということで、またもびっくり。原氏と言えば、『るみちゃんの事象』『ハラストレーション』などのギャグ漫画の名手というイメージしかなかったため、色々な意味で本当にサプライズな抜擢だった。ゴトウ氏のオリジナル作品を読む機会がお預けになるのは残念だったけど、きっとまた、ものすごいものを目にすることができるだろうというワクワクが募った。

natalie.mu

  前置きが長くなってしまったが、『フォビア』第1話の感想を。主人公は隙間恐怖症の女性。幼少時に、側溝に遺棄された死体と偶然目が合ってしまったことがトラウマとなり、大人になった現在も隙間恐怖にさいなまれる生活を送っている。冒頭、他人のかばんから覗く人の髪の毛と頭頂部の絵が非常に生々しくて、ゾッとした。ゴトウ氏を作画に起用したことが大正解であったということが、これでもかと証明されている。

 主人公は、自分の恐怖症に理解のある男性と交際をすることになり、一時は幸せな日々を過ごす。しかし、隙間を見ると不安になり、それを埋めずにはいられないという自身の特性を抑え込むことはできず、すれ違いが起こっていく。ある時、主人公は恋人が他の女性と情事に及んでいる姿を見てしまう。傷付くよりも先に、彼が「隙間」に飲み込まれるのではないかという心配をしてしまう主人公。やがて彼女は、その隙間を埋めるためにとんでもない行為に走ってしまう、、、というのが第1話のお話。

 恋人を「心配」してしまう思考のベクトルの狂いや、その後の主人公の行動もホラーなのだけど、もっと根本的な倒錯を成立させている構成に私は痺れた。それは、情事を覗き見した時点で、すでに主人公は「隙間の世界」の人間になってしまっていたという倒錯である。扉の”隙間”から室内を覗き見る主人公は、隙間の向こうからこちらを眼差してくる「あちら側」の住人になっている。自己にトラウマを植え付けた、あの側溝の遺体と同様の存在と化しているのである。物語が実はいち早くオチていることに気づいたとき、何とも言えない不気味さと悪寒を感じた。原氏の構成の妙である。

 しかしそう考えると、第1話のラストのあのオチはややくどすぎるような気がしなくもないが、絵的な対応関係が序盤と終盤で綺麗に成立している(「綺麗」と言っても、絵そのものはとてもホラーなのですが)ので、やはりあの形でよいのかもしれない。

 斬新なタッグによって始まった『フォビア』は、もっと多くの人に読まれてほしいと切に願います。始まったばかりなので、ホラー漫画を十分に読みなれた方にとっては、「『ホラー』してみてます」感があったりするのかも分からない。ただ、すばらしい第1話が放たれているのは揺るぎない事実である。この「シミュレーション」が板についてくる瞬間に立ち会う楽しみ(と恐怖)を考えると、この先も絶対に見逃してはいけない作品であると思う。

  第2話は明後日(3月12日)発売の本誌に掲載されるそうです。ビッグコミックスペリオールを買いに走らねば!

 

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新しいおやホロの形 2021年2月24日(水)SICK×IDOLS×SICK -Shibuya War- (めろん畑a go go、疾風LITTLE GORILLA、なんちゃらアイドル、おやすみホログラム)@渋谷duo MUSIC EXCHANGE

 めろん畑a go goさん主催のライブ「SICK×IDOLS×SICK -Shibuya War-」に行ってきました。おやすみホログラム以外の出演者の皆さんのライブを生で観るのは初めてでした。おやホロ新体制をアコースティック以外の形態で観るのも、私にとっては初めてだったので、実質みんな”初”だったと言ってもよいかもしれません。

 オープニングアクトは疾風LITTLE GORILLAさん。衣装がシュール過ぎてびっくりしました。懐かしい曲をいくつか歌っていたのですが、国本武春が聴けるとは思わなかった。『くまのプー太郎』直撃世代なので、非常に胸熱でした。それにしても、こんなに「前座」らしい「前座」を立てるとはさすがGollipop Recordさん。

 2組目に登場したのはなんちゃらアイドルさん。ずっとライブを観てみたかったお二人だったので、初めて観ることができてとても嬉しかったです。二人とも、ものすごく可愛い。歌も上手で、ふとした時の仕草もすべてかわいい。そして曲も良かった。90年代スピリットが宿っている感じの楽曲たち。オープニングの疾風LITTLE GORILLAさんは80年代的なポエジーを表現していたので、流れとして非常に美しく感じました。CDが欲しくなりました。この日は時間が無くて、終演後にすぐに帰ってしまったので、次の機会にはなんちゃらアイドルさんの物販に必ず立ち寄りたい。

 3組目はおやすみホログラム。カナミルさんとオガワさんの二人で出演。トラックを流して、オガワさんのギターも入るという形。この新体制がすごく良い!! カナミルさんの歌声が相変わらず素晴らしかった。みずみずしい。「fairytale」が一曲目だったのですが、ほんのりスーパーカー風味。その後は「そんな光」などの既存曲のほかに、カナミルさん作詞の新曲「亜空間」なども披露。「亜空間」の詞も曲も大好きなのでめちゃくちゃ嬉しかった。ところで、「そんな光」を聴いていると、やっぱり最後のところでもう一つのパートの声が欲しくなってしまいます。脳内で補完しながら、ほんの一瞬だけ心が2019年にタイムスリップしました。

 MCを挟んだのちのラスト2曲は「drifter」と「ニューロマンサー」。「drifter」が激変していてかなりびっくりしました。「ニューロマンサー」もだいぶ変化していたけれど、イントロのギターのメロディですぐに気づくことができました。2曲ともおやすみホログラムの代表曲と言って差し支えない曲なわけですが、ボーカルの声をじっくり聴きやすいアレンジで聴いてみると、改めて詞と曲の素晴らしさを確認できたような気がしました。「ニューロマンサー」の「ラタ トゥタ・・・」のくだりが大好きなんですけど、やっぱり美しい。

カナミルさんのバンドセットもまた観たくなりました


20190501 おやすみホログラム(カナミルソロバンドセット) LIVE AT LOFT [FULL]

 

 

 トリを飾ったのはめろん畑a go goさん。おやホロのラストの「ニューロマンサー」があまりにも良すぎたので、どんな気持ちで聴こうかなと思っていましたが、見事なパフォーマンスを前にして、強制的に気持ちが切り替わりました。The Grateful a MogAAAzリーダーも兼任されている、知世千世さんがすごく良かった。目が離せなくなってしまう。動きに無駄がなくて、照明が暗いときのシルエットの動きまで洗練されていた。振付を担当されていることもあってか、レベルの違うことをやってのけている瞬間を何度も目にすることができて非常にかっこよかったです。もちろん他のメンバーさんにもそれぞれに華があって、こりゃ何度も足を運んで、それぞれのすごいところを見つけたくなっちゃうなという気持ちに。ツアーファイナルの会場やファンクラブ始動の告知もされていて、メンバーもファンの皆さんも幸福そうでした。

 素晴らしいブッキングをしてくださっためろん畑a go goさん、運営の皆さま、本当にありがとうございました。

 

 一生懸命歌い上げていたカナミルさん

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