もしもし、そこの読者さま

ライブアイドルのライブレポ、Sexyzoneのライブレポ、映画・舞台・本などの感想などなど

優しくて、したたか! こだま『ここは、おしまいの地』(太田出版)感想

 こだまさんの『ここは、おしまいの地』(太田出版)を読みました。『夫のちんぽが入らない』の方は読んでいましたが、こちらはまだ未読でした。どうしてもっと早く読まなかったのだろうという気持ちです。 

lucas-kq.hatenablog.com

 

 『ここは、おしまいの地』には、『夫のちんぽが入らない』ではあまり詳しく語られなかった、こだまさんのふるさとにまつわるお話が数多く収録されていました。 個性的な身内の話、「くせえ家」に引っ越した話、病気の話、巻き込まれ体質の話など、いずれのエピソードも強烈でした。面白さの中に少しの切なさがある作風は相変わらずなのですが、そのブレンドの仕方が『夫のちんぽが入らない』とはまた少し違った感じで、素敵なエッセイでした。

 家族(特にお母さん)のお話を読んでいる途中、「そんなひどいことを言われたのか!」とか「なんてひどいことをされたんだ!」と思うと同時に、「こだまさんはご家族を恨んでいるのだろうか・・・」という一抹の心配も頭によぎって、読書中の緊張感がすごかったです。けれども、そんな読書中の私のドキドキは全くの杞憂で、こだまさんは母親を恨むどころか、母にとっての「地獄」を想像して理解して赦していました。いずれのエピソードにも、苦しい思い出だけではなくて、現在地からの優しい眼差しや、ポジティブでたくましい決意が書き込まれています。

 そのしたたかさと優しさは、『夫のちんぽが入らない』に対する言いがかりのような批判に対しても誠実に応答している、twitter上でお見かけしているこだまさんそのままでした。もちろん、「中の人」が同じ人なのだからそれは当たり前だし、本当に馬鹿みたいな感想だと自分でも思うんですけども、「書かれたもの」に宿っている「こだまさん性」みたいなものが、どのような媒体であっても変わらないところがとても素敵だと思い、ますますファンになってしまいました。

  私のお気に入りは「くせえ家」の一連のお話と、「いちご味の遺品」です。しんどかったはずの体験であっても自由にのびのびと、軽妙に書き続けている姿に励まされました。自分の苦しさも軽くしてもらえるようで、勇気が湧いてきます。こだまさんはめちゃくちゃ強い人なのだと思いました。僕の脳内でのこだまさん像はもう、ドラクロワの「民衆を導く自由の女神」のイメージです。こだまさんが出してるのは乳房ではなくて『ちんぽ』ですが、あのたくましい女神のような人なのだと思います。

 ドラクロワ「民衆を導く自由(の女神)」

f:id:lucas_kq:20181124163715j:plain

  

f:id:lucas_kq:20181124161257j:plain

 

ここは、おしまいの地

ここは、おしまいの地