2019年上半期に読んだ本たち
上半期に読んだ本のメモです。年明けはたくさん読めましたが、春に失速したのが悔しい。もっとたくさんインプットしたい。今まであまり読んでこなかったジャンルの本にも、勇気を出してチャレンジできたのが収穫です。
架空戦記の名手、佐藤大輔による大作。『皇国の守護者』のようなファンタジックなものもたいへん面白いのですが、歴史ifモノを書かせても抜群に面白い。第二次大戦の終わり方があのようでなかったならば、どうなっていたのかという思考実験。南北に分断された日本をめぐる物語です。函入りの豪華版で、美しい青の装丁も素晴らしい。
デイヴィッド・ゴードン『用心棒』早川書房
エンターテイメントの教科書のような一冊。海外エンタメはお話の作り方が巧みでとても勉強になります。
笹井宏之『えーえんとくちから』ちくま文庫
若くして亡くなられた歌人の歌集。言葉の新しい使い方が気持ちいい。読んですぐに感想の記事を書きました。
外国語に関する素敵な本を世に送り出し続けている著者の、エッセイ。学ぶことは世界を広げることなのだと改めて考えさせられました。昨今の外国語教育に対する問題提起も含まれています。
こちらも、黒田氏の外国語エッセイ。黒田先生は読者の学習モチベーションを上げるのがお上手。私も見習いたい。
授業のマクラをまとめたような一冊。どのエピソードもとても面白いです。
爪切男『死にたい夜にかぎって』扶桑社
爪切男さんの私小説。気難しい女の子に振り回される物語。車いすの女性が登場するエピソードで爆笑しました。
ハハノシキュウ『ワールド・イズ・ユアーズ』星海社
ラッパーやライターとして幅広い活躍をしているハハノシキュウの小説デビュー作。村上春樹『風の歌を聴け』の色濃い影響を受けつつ、ラッパーらしい「引用」の技術が冴え渡っています。 平成の風俗を後世に伝える名作になる予感。
奔放な異性に振り回されるという筋立ては、『死にたい夜にかぎって』にも共通する部分があり、それぞれに作者の個性が光る作品を併せ読みできたことを幸福に感じます。
春風亭一之輔による人生相談。適度な脱力感と、師匠独自の価値観に目からうろこでした。世界のとらえ方が素敵。
御霊信仰について勉強したくなり、読みました。丸谷才一の評論を初めて読んだのですが、とても面白かったです。御霊信仰をキーワードにして、忠臣蔵を読み解いた評論がピカイチの面白さ。作品の見方をがらりと変えて見せる手際に感動しました。
こちらも、勉強のために読みました。面白い!
こちらも勉強のために読みました。和歌って面白い。
斎藤美奈子『紅一点論―アニメ・特撮・伝記のヒロイン像』ちくま文庫
大学生の時に読もうと思いつつ、ずーっとスルーしていた名著。面白かったです。男性をハッとさせる鋭い視点で、物語におけるヒロインの描かれ方を分析しています。
無料公開されていたのを機に読んでみました。「民意」が、国家という暴力装置をハッキングしてしまうことの恐ろしさ。
『IDOL AND READ 017』シンコーミュージック
アイドルたちはどんなことを考えて活動をしているのか。彼女たちの職業倫理のようなものが時折浮上してくるようなインタビューが、毎号1~2本はあって、それに出会えた時の感動がやめられない。特定の事務所に所属しているタレントの広報誌のような側面も否めないのですが、時々「宝物」に出会える雑誌です。
『マンガ家になる! ゲンロン ひらめき☆マンガ教室 第1期講義録』ゲンロン
こちらの本は、創作のヒントが得られるのではないかと思い購入。大当たりの一冊でした。執筆がはかどらなくて迷っていた心の処方箋となりました。なんにせよ、書き切ることは大事なのだなと。第一線で活躍されている作家さんは、例外なく技術の「密輸」がお上手なのだということが分かりました。「役に立つ/立たない」というのは予め決まってなんかいなくて、すべては受容者次第。貪欲に何でも吸収していこうという強い気持ちを持つことができました。マンガに限らず、何かを表現したい人にとって必読の書になると感じました。
長い長いインタビューが載っています。読み応え抜群です。
漫画家本vol.10 浅野いにお本 (少年サンデーコミックススペシャル)
- 作者: 浅野いにお
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2019/01/30
- メディア: コミック
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今回は初めての海外ロケ(?)がなされたお話が収録されています。虚実がドロドロと溶け合った、不気味で美味しい飲み物を飲んでいるかのような気持ちになります。
折り返し地点は過ぎているとは思いますが、まだ完結には通そう。アーサーの復活を心待ちにしています。
大童澄瞳『映像研には手を出すな』①~、小学館
話題になっているので読んでみました。画力がすごい。吹き出しの形を「面」に合わせる描き方が面白い。
こだまさんによる大ヒット私小説のコミカライズ第2巻。主人公に立ちはだかる新たな試練の章です。
高松美咲『スキップとローファー』①、講談社
超面白かった。お話づくりが巧い。人物の書き分けがお見事。人間に対する深い愛情を感じます。
壮大な世界観を小出しにしていく、その出し方がいつもいつも巧い。引き込まれました。
2巻までしか読んだことがなかった『神のちからっ子新聞』。隅々まで楽しみながら、少しずつ読むのが楽しい。