2018年下半期に読んだ本たち
2018年下半期の読書記録です。今年は去年よりもたくさん本を読めた気がします。目前に控える正月休みは、読書漬けになろうと企んでいます。
傑作でした。主人公の人物造形が、『皇国の守護者』の新城直衛そっくりです。「『皇国の守護者』のキャストを使ってSFをやってみました!」的な香りのする作品。佐藤大輔作品の中ではレアな、きちんと完結しているシリーズでもあります。暴動がいかにして起こるかというシミュレーションでもあり、政治的な駆け引きもあり、組織に生きる人間の生き残りの物語でもあるし、濃厚な人間ドラマです。
佐藤大輔『宇宙軍陸戦隊』中公文庫
『地球連邦の興亡』の登場人物である「国場元首相」の軍人時代を描いたスピンオフです。遺伝子操作によって異形の者となり果てた「人類」が生息している植民惑星で繰り広げられる内戦のお話。ゴジラのパロディ(?)作品の「攻撃目標G」という短編も収録されています。どことなく筒井チックな趣がありつつも、佐藤大輔らしさ全開で楽しめました。
なんだか無性に読み返したくなってイッキ読みしてしまいました。何度読んでも面白い。何気に、表現規制の問題に関する話も描かれていて、とても勉強になる再読となりました。私の知る限り、この世で一番面白くて痛快な戦記シリーズだと思っています。
ユッシエーズラ・オールスン『特捜部Q』シリーズ(早川書房)
現在刊行されているものをすべて読みました。面白かった。シリーズを重ねるごとに筆力が円熟味を増していて、毎作品おもしろさが更新されていっているのがすごい。すっきりと事件が解決して終わるだけではなく、事件解決後も依然として横たわるデンマークの社会問題にも鋭く切り込んでいます。日本も他人事ではないなと感じる問題もあり、引き込まれます。 早く続きが読みたい!
特捜部Q―自撮りする女たち― (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
- 作者: ユッシエーズラ・オールスン,Jussi Adler‐Olsen,吉田奈保子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2018/01/10
- メディア: 単行本
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特捜部Q―知りすぎたマルコ― 上 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
- 作者: ユッシエーズラ・オールスン,Jussi Adler‐Olsen,吉田薫
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2016/06/23
- メディア: 単行本
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特捜部Q―知りすぎたマルコ― 下 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
- 作者: ユッシエーズラ・オールスン,Jussi Adler‐Olsen,吉田薫
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2016/06/23
- メディア: 単行本
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レナード・ムロディナウ『ユークリッドの窓』(ちくま学芸文庫)
数学の歴史をドラマチックに描いた一冊。偉人たちの「知のリレー」が熱い。高校生の時にこういった本に出会っていればもう少し数学を好きになれていたかもしれません。数学史とか科学史の授業が中高の必修科目になればいいのに。
ユークリッドの窓: 平行線から超空間にいたる幾何学の物語 (ちくま学芸文庫)
- 作者: レナードムロディナウ,Leonard Mlodinow,青木薫
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2015/02/09
- メディア: 文庫
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姫乃たま『周縁漫画界』(KADOKAWA)
「インタビュー集」と銘打たれていますが、「姫乃たまさんによる訪問レポート」と呼んだ方が正確かもしれません。姫乃さんの語りが非常に巧みで、いままで興味を持って追いかけたことのなかった漫画家さんの訪問レポも夢中で読んでしまいました。そういう意味で非常に雑誌的。姫乃たまさんは「雑誌になりたい欲」を強くお持ちだそうで、最強の雑誌的文化人になっていくであろう彼女の今後の歩みを全力で応援していきたいと思いました。
先日、個別に感想記事も書きました。
ついに出ました。夢眠さんのまろやかな狂気2。めちゃくちゃ丁寧な「遺言集」です。自分がいなくなった後のでんぱ組のことや、ファンのことをものすごく案じたうえで言葉を選んでいるのが伝わります。近日中に感想の記事を書きたいと思います。
- 作者: 夢眠ねむ,マーキー編集部/MMM editorial,発行:マーキー・インコーポレイティド 発売:星雲社
- 出版社/メーカー: 星雲社
- 発売日: 2018/12/20
- メディア: 単行本
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ソ連に、そしていまのロシアに興味がある人は必読かもしれません。近くて遠い大国の歴史が非常にわかりやすくまとめられています。『大砲とスタンプ』の作者である速水螺旋人氏のイラストが素敵です。上坂すみれさんが帯文を書いていて、各方面への目くばせもお上手です。
こだま『ここは、おしまいの地』(太田出版)
『夫のちんぽが入らない』が大ヒット中のこだまさんによる、エッセイ集。軽やかで、笑えて、元気が出てくる本です。以前、あつくるしい感想を書きました(笑)
『夫のちんぽが入らない①』(講談社)
ゴトウユキコの新刊が今年は2冊出ました。暖かさとか丸みの中に、鋭い刃が秘められていて、ドキッとさせられる作品たちです。
以前2冊まとめて感想を書きました。
第9話の「恋するフィアールカ」は今年読んだ漫画で間違いなく5本指に入ります。『シトラス学園』の頃から続く、山本ルンルン氏の物語づくりの巧さが光っていました。サーカス内でのいじめや、スランプに挫けそうになりながらも、自分の「世界」を変えるためにスターダムにのし上がっていく。青年編も楽しみです。ロシア好きをニヤリとさせるディティールにも感心しました。ピクルス食べたい。
続きを読むのがとにかく楽しみな作品です。あまりにも巨大な実力を持つがゆえに、孤独な存在になってしまっているワンパンマン。ガロウは彼の孤独を慰めることのできる存在になれるのでしょうか。
偉人たちが異世界でドンパチを繰り広げる戦記ファンタジー。そのモチーフ自体はFateと通じるものがあります。しかし、戦記物としての重厚さがあるのが本作の特色。生きるか死ぬかの緊張感をもっと見せて欲しいところ。ガンダムSEEDのような興行的戦争ドラマに堕することはないはずなので、今後がますます楽しみです。
壮大な世界観を少しずつ見せていく、その見せ方が巧い! そして絵も巧い。現実世界を生きる私たちは龍の肉を食べることはできないけれど、この作品を読むと何かしら肉料理を食べたくなります。5巻を読んだ後は、馬刺しを喰いたい気持ちになりました。
刊行ペースが衰えないのがすごい。作者のエネルギーに敬服です。物語は少しずつ終わりに近づいています。アーサーの活躍を早く見たい。
『孤独のグルメ』以後、何匹目のドジョウを狙っているのだか分からないグルメ漫画たちが粗製濫造されていますが、この作品はそれらとは一線を画しているように感じました。手の込んだ料理ではなくて、シンプルに肉とめしの食べ方を追求しているところがクール。実在のお店や、どこかのご当地グルメ的なものなどは一切呼び込まず、「P県」という架空の土地の話に終始させているところもクール。ストイックな食漫画です。お腹がすいている時は読まない方がいいかもしれません。
鶴田謙二氏の作品は、絵を見ているだけでうっとりとした気持ちになります。芸術的な描線。そして、女の子が可愛い。実家に置いてきてしまった『Spirit of wonder』を回収して、読み直したい衝動に駆られました。鶴田謙二全集が出たら、いくら払ってでも読みたい。