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彼女はとんでもない大名跡を遺していきました『まろやかな狂気2 夢眠ねむ遺言集』(星雲社)感想

 

 夢眠ねむ『まろやかな狂気2 夢眠ねむ遺言集』を読みました。本当はもっと早く感想を書きたかったのですが、本業の方での多忙と重なり、遅くなってしまいました。

 1月も半ばを過ぎ、気が付けばもう、舞台に立つ夢眠ねむは不在の世界になっていました。夢眠さん、ご卒業および「完成」おめでとうございました。卒業公演に行くことはできなかったのですが、twitterのタイムラインに流れてくるいろんな人の想いのこもったツイートやご本人のツイートなどを見ながら感慨にふけりました。

先日、宗像明将氏が素敵なレポートを発表されています。

ototoy.jp

 

 『まろやかな狂気』が出た時にも感想を書きました。無駄に熱のこもった、読みにくくて気持ち悪い感想文ですが、若かったということで・・・。あの頃、『まろやかな狂気』を「去りゆくための準備の書」みたいだと言っていたら、今回本当に「遺言集」と銘打って出版されたので、「やっぱり」という思いと「本当に終わるのね・・・」という寂しさの混ざり合った不思議な心持ちになりました。 

lucas-kq.hatenablog.com

 

 以前書いたものと重複する部分もありますが、でんぱ組の思い出話から始めます。

 私がでんぱ組inc.を知ったのは2011年でした。11月に「Future Diver」を出したばかりのタイミングで、翌月の1stアルバムの発売を控えていた時期です。当時まだ原宿にあったニコニコ本社の狭い会場でライブがあり、それを観に行きました。ライブを行うスペースには高さのあるステージなどはなく、ロープで仕切ってあるだけだったと記憶しています。同じ目線で超間近にアイドルのライブを観る初めての経験でした。夢眠さんの存在感の大きさ(オーラ的にも物理tゲフンゲフン!)に圧倒されました。あと、えいたそから目が離せなかったことも鮮明に覚えています。えいたそは初めて観た時から太陽みたいでした。  

その日のライブのレポートを残されている方がいらっしゃいましたので、紹介させていただきます。atmark-jt.blogspot.com

 

 でんぱ組を知ったそもそものきっかけは、twitterで偶然夢眠さんを見かけてファンになったところから出発しているので、夢眠さんは最初に私が知ったメンバーでもありました。そしてニコニコ本社でえいたそを知り、夢眠さん&えいたそ推しになったのでした。その後、夢眠さんがスネオヘアー氏をお好きであることを知ってますますファンの度合いを深めたりしつつ、でんぱ組inc.の活動をずっと追い続けていました。その後はタルトタタンやおやホロちゃん達に夢中になってしまい、でんぱ組inc.に関してはほぼ在宅オタではありましたが、冠番組等はだいたい観ていました。

 さて、『まろやかな狂気2』の感想ですが、本当に丁寧な「遺言集」でした。特に印象的かつ、重要な言葉だと思ったのは、「次に入るメンバー、他のメンバー、昔・現在の体制と比べないでください」「文脈を理解せよ、そしてディグれ」だと思いました。

 前者については、でんぱに残るメンバーに対する最大限の思いやりだと思いますし、オタクの愛を試す言葉でもあると思います。夢眠ねむを愛しているのなら、「夢眠ねむが愛するでんぱ組inc.を、変わらず愛し続ける」(グレンラガンのカミナ話法っぽいですが笑)ことがオタクとしてできる最高の愛情表現だよなあと思いました。というか、そういう方向へとオタクの思考を促すように、夢眠さんが上手に遺言を残しているのがすごい。そして、自分のオタクならばそれに応えてくれるだろうと信じているからこその遺言なのだと思いました。 

 後者の「文脈を理解せよ、そしてディグれ」に関しては、若いファンの子たちへのメッセージであると同時に、メディアリテラシーの低い人たちに向けた牽制球のようにも受け取れました。特に最近は、発信された文章を文として捉えず、目についた単語に脊髄反射的に反応するだけのようなネットユーザーをよく見かけるような気がします。写真と一緒にハッシュタグを羅列して投稿を行う文化がもたらした弊害なのではないかと私は考えていますが、対話が成り立たないのは悲しいことです。

 本書には「アイドルシーン」と題した夢眠さんともふくちゃんの対談が収められています。オタクたちと喧嘩しながら信頼関係を築いてきた歴史について夢眠さんが熱く語っている箇所があって、そういうことだよなと納得したのでした。病まずに逃げずに対話して、最終的にはパフォーマンスでもって納得させる。そのために血のにじむような努力を重ねてきたでんぱ組inc.に改めて敬服しました。

  その他の個別の対談等については、もう手にとって読んでくださいという感じです。メンバーたちとの対談はとくに胸が熱くなります。これを読まずしてアイドルシーンは語れない!

 夢眠ねむさんの成し遂げたことの中で、私が一番すごいことだと思っているのは、自身を「初代夢眠ねむ」とした2012年の生誕「夢眠時代」です。アイドルとしての芸名を名跡にしちゃう発想! アイドルの世界に限らない、人間の原理的な交換可能性みたいなものを視野に入れてのアイロニーを感じて、いたく感動したことを昨日のように覚えています。同様のアイデアは同年4月に放送されたアニメ『AKB0048』で既に見られましたが、スピード感がすごい。ソロ名義のアルバムのタイトルを同じ『夢眠時代』にして幕引きへと向かったのにも、納得感があります。 

 この大名跡、いったい誰が継げるというのでしょう。

ameblo.jp

 『まろやかな狂気2』もきっと、後進のアイドルにとって最良の教科書になるのだろうと確信しました。素敵な本をどうもありがとうございました。夢眠さんの次のお仕事も応援し続けたいと思います。 

 
まろやかな狂気2 夢眠ねむ遺言集

まろやかな狂気2 夢眠ねむ遺言集

 

 

夢眠時代 (通常盤)

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