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よく、走る人 おやすみホログラムのMVから考える

 おやすみホログラムの次のリリースや、ワンマンを楽しみにしながら毎日を過ごしています。そして、2人体制になってから撮られたPVをしょっちゅう観ています。おやホロちゃんのMVを観ながらぼんやり考えたことをつらつらと書きたいと思います。オガワさんの頭の中の箱庭に、また少しタッチできるかな。

 全部通して観ていて気が付いたのが、走る場面が含まれている率が高いなということ。「note」も「帰り路」も「11」も「too young」も走るシーンがあります。「誰かの庭」と「ニューロマンサー」は走りません。以下、それぞれの曲ごとに書いていきます。

 

「note」(2015/05/04公開、監督・衣装:そってぃー)

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 「note」のPVで一番の見どころは、最初はかなりラフな普段着っぽい姿で道を歩きながら歌っていた二人が、落ちサビで衣装姿になる瞬間だと思います。おやすみホログラムに変身する二人。ニチアサというか、ヒーローというか、そんなカッコよさを感じます! この頃の衣装で撮られたアー写のポーズがちょっとカッコいい風なところも含めて、美少女を戦士として表象する日本のサブカルチャーの伝統を踏襲しているような印象を受けます。変身バングは脳内で補完して楽しみましょう。

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 モノクロの映像が徐々に色彩を取り戻していく過程も美しいですよね。二人が走り出すのは映像の終盤です。一番盛り上がる「ぜーーーんぶーーーーー」の所で勢いよく走る二人は、成長著しかったこの頃の二人の勢いを象徴するかのようです。そして、八月ちゃんの走り方が小ダサい! それがすごく可愛い! 一気にハートをわしづかみにされます。

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「帰り路」(2016/04/20 に公開、撮影・監督:カンパニー松尾 

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 「帰り路」のPVは、「エメラルド」のPV以降オガワさん独自の世界観に完全移行したおやすみホログラムの流れの中に位置づけられるかと思います。「戦う美少女」的な文脈なども全く見られないことから、アイドルのシミュレーションを完全に辞めていることが分かります。凡百のバンドたちに一泡吹かせる方向にかじを切ったオガワコウイチPの戦略の表れの一つとして観るべきでしょう。「2」リリース後のインタビューでもオガワさんは同様のことをおっしゃっていますし、「モッシュピット LIVE VERSION」上映後のトークでも、バンドに「恥ずかしい」と思わせたいということをおっしゃっていました。しかし、このPVを撮られたのはカンパニー松尾監督なんですよね。偶然なのか、事前に打ち合わせがあったのかは定かではありませんが、その辺の意向をちゃんと汲んだ作品に仕上げている監督、すごすぎです! 

ototoy.jp

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 さて、この曲は分かりやすく盛り上がれるような、テンポのある曲ではありません。しかし、メンバーそれぞれに走るシーンがあります。舞台は夜の街で、「夜」を描いた曲を多く歌っているおやすみホログラムにふさわしい映像になっています。

 ところで、このPVは、「帰り路」という曲のPVでありながら、ある意味で「帰り路」のPVではないと私は思っています。素直に観ると、「もしも八月ちゃんとカナミルがおやすみホログラムになっていなかったら」という平行世界のようなストーリーを描いた映像作品として見ることができます。カナミルは居酒屋でバイトを終え帰路につき、八月ちゃんはライブハウス(新宿ロフト!)でのバイトを終えて帰路につきます。二人はお互いのことを知らないまま歩道橋ですれ違い、一度は振り向きますが、そのままそれぞれの家路へと歩みだします。そこで思い出されたのが「夜、走る人」でした。「夜、走る人」の「あの人は眠らない、一晩中走ってる」「彼女は彼を知らない」というフレーズを連想しました。そして、「帰り路」のPVには、夜の帰り道を駆け出す二人がいて(歩いている場面も多いけど)、二人はお互いのことを知らない! これは、ただの偶然では片付けられない符合ではないかと思うのです。オガワさんは、自分の歌詞は全部世界観が一緒だということも「2」のインタビューで答えていたので、こういうことが起こるのかもしれません。しかし、繰り返しになりますが、このPVの監督はカンパニー松尾さんです。 カンパニー松尾監督は「2」を聴いてすぐに映像が浮かび、このPVを撮られたそうです。

 ということは、このPVに「夜、走る人」のような雰囲気が感じられるのは、おそらく意図したものではないのでしょう。二人の感性が響き合って、複数の曲の情景を横断するような形で、オガワさんの箱庭が一つの映像作品として結実するってすごい奇跡だと思いました。いま、「奇跡」と書きましたが、しかし一方でこれは偶然でもない気がしている自分もいます。たくさんの人間の身も心も裸にしてきた監督の、鋭い観察力や、人の心に寄り添う能力がそうさせた必然なのかもしれません。ただただ敬服です。 

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「11」(2016/04/22に公開 撮影:岩淵弘樹、エリザベス宮地、カンパニー松尾 アニメーション:八月ちゃん 監督:岩淵弘樹

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 「11」のPVには、メンバーそれぞれが走るシーンと、二人一緒に走るシーンがいずれも確認できます。一人で走っているシーンは一瞬ですが、全編を通じて明るい雰囲気に満たされています。私が一番好きなのは、八月ちゃんが後ろ走りをする場面です。前を向いたまま後ろに走る表情が、いい感じにヘラヘラしていて素晴らしい。八月ちゃんが何か思い悩むことがあって、後ずさりしてしまうようなタイミングがあったとしても、このPVのこの場面のように、前向きな後ろ走りであればいいなと願ってやみません。

 「note」にも二人で走る場面はありましたが、このPVでは、カメラは二人を後ろから追いかけているという点で「note」とは異なっています。どんどん成長して、背中を追いかけられるような存在となる二人を暗示していると解釈したいところですが、それは未来にならないと分かりませんね。

 ちなみに私はおやホロのすべてのPVの中でこれが一番好きです! 岩淵監督のマスターピースの一つに数えなくてはならない作品だと思います!

 

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「too young」(2016/06/14 に公開 撮影・監督:平井侑馬)

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 「too young」のPVは、これまでになく閉鎖的な二人の世界を描いた映像作品となっています。めっちゃ百合! 以前歌詞分析をした時にもちらっと触れましたが、この曲はオガワさんの曲にしては相当珍しい、「君」と「僕」がちゃんと一緒にいる世界観が描かれた歌詞を持つ曲です。

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 世界の果てでいちゃこらしている「君」と「僕」は、きっとこんな感じなんだろうなと確信させてくれる美しい映像です。輪を描いてくるくると回りながら二人が走る場面があるのですが、閉ざされた円環の軌道をなぞる運動をさせるあたりも、「君」と「僕」だけの閉じた世界を描くというこの曲の本質を衝いたニクい演出だなと唸らされます。 そのほかにも、二人はとにかくくるくる回ります。手をつないだまま走る場面もあります。

 

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おまけ 「drifter」について 

 「drifter」のPVには、今はもういないメンバーがしっかり参加しています。なの小夕子さん演じる女性が見ているものが、夢なのか現なのか決定不能になっていくストーリーが展開されます。「胡蝶の夢」みたいなモチーフですね。

 このPVの終盤、メンバーが一人また一人と消えていき、一番最後になの小夕子さんも消えていきます。そして場面は橋の上へと移り、そこで実体を持ったカナミルだけが映されるんですけれども、これって鳥肌ものだなと思うのです。このPVが公開されたのは2014年の5月ですが、この後の流れをすべて暗示していたんだなと。

 最後のカナミルの登場の仕方には、まるでアニメの次回予告みたいな衝撃があります。そのほかのすべての出演者を凌駕するビジュアルも含めて、本当にすごい。オガワさんはこの時点で、カナミルには絶対に残ってもらうと決めていたのではないかというような、そんなオーラがあります。

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 ↑鳥肌ものの展開です!!

 

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